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4.労働災害防止を推進する上での課題



  労働災害防止を推進する上での主要な課題は、次のとおりである。





 (1) 労働災害の動向等からみた課題



   労働災害による死傷者数は、昭和43年の172万人を頂点として長期的に減少し

  てきているが、今なお年間約55万人もの労働者が被災し、そのうち休業4日以上

  の死傷者が約13万人を占めている。また、死亡者数については、昭和36年の6,712

  人を頂点として、労働安全衛生法が施行された昭和47年から4年間で半減に近い

  減少を示してから漸減傾向にあったが、平成10年に2,000人の壁を破って以降、

  着実に減少しつつある。しかし、今なお年間1,800人近くもの労働者が労働災害

  により死亡している。他方、一度に3人以上が被災する重大災害の件数は、年間

  200件前後で推移しており、減少の傾向が認められない。



  ア 業種別労働災害発生状況



  (ア)建設業



     建設業に従事する労働者数は、全労働者の約1割に当たるが、労働災害の

    発生については、全産業における死亡災害の4割弱、休業4日以上の死傷災

    害の2割強、一度に3人以上が被災する重大災害で約4割を占めている。

     建設業における労働災害は、大手総合工事業者よりも中小総合工事業者が

    元請となっている現場において多発している。

     災害の種類別では、墜落・転落災害が死亡災害の約4割を占め、また、建

    設機械による災害が1割強を占めている。





  (イ)製造業



     製造業における労働災害は、休業4日以上の死傷災害で全産業の約3割、

    死亡災害で全産業の約2割、一度に3人以上が被災する重大災害で全産業の

    約2割を占めている。労働災害の種類別でみると、機械設備による挟まれ・

    巻き込まれ等の災害が、死亡災害では全体の約3割を占め、休業4日以上の

    死傷災害では、全体の5割近くを占めている。





  (ウ)陸上貨物運送事業



     陸上貨物運送事業においては、近年、規制緩和等に伴い事業の新規参入が

    増加するとともに、物流システムの見直しや輸送サービスの多様化が進めら

    れている。このような中で、陸上貨物運送事業における死亡災害と休業4日

    以上の死傷災害は、いずれも全産業の約1割を占め、この数年間、労働災害

    の発生件数はほぼ横ばいで推移している。

     災害の種類別では、死亡災害の約7割を交通労働災害が占め、また、休業

    4日以上の死傷災害では、荷役作業中の墜落・転落災害や荷の落下等による

    災害が多く発生している。





  (エ)第三次産業



     第三次産業(交通運輸業、陸上貨物運送事業及び港湾貨物運送事業を除く。

    以下同じ。)は、サービス経済化の進展により全産業に占める労働者数の割

    合が増加傾向にあり、その割合は6割を上回っている。これに伴い、第三次

    産業の全産業に占める労働災害の割合も増加傾向にあり、休業4日以上の死

    傷災害で約3割、死亡災害で約2割となっている。

     労働災害の発生率は、第三次産業全体で見れば全産業平均に比べ低いが、

    業種により労働災害の発生率、発生態様が異なっている。





  イ 事業場規模別労働災害発生状況



    我が国の労働者数の8割以上を占める労働者数300人未満の中小規模事業場

   において、労働災害の9割強が発生しており、そのうち50人未満の事業場で7

   割強を占めている。

    労働災害発生率を事業場の規模別に見ると、規模が小さくなるに従って労働

   災害発生率が高くなっており、労働者数100人から299人の規模の事業場と労働

   者数30人から99人の規模の事業場においては、労働者数1,000人以上の規模の

   事業場に比べ、それぞれ労働災害発生率が約5倍、約7倍となっている。





  ウ 年齢別労働災害発生状況



    少子化・高齢化社会の進展に伴い、労働力人口の高齢化も進み、50歳以上の

   高年齢労働者の占める割合は増加傾向にあり、約3割に達している。死亡災害

   と休業4日以上の死傷災害で見ると、50歳以上の高年齢労働者がそれぞれ全体

   の5割、4割を上回る等大きな割合を占めている。





  エ 災害の種類別労働災害発生状況



    休業4日以上の死傷災害では、高所からの墜落・転落災害、機械等による挟

   まれ・巻き込まれ災害が多い。また、死亡災害では、交通労働災害、墜落・転

   落災害がそれぞれ全体の約3割と約2割を占めている。

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