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1.計画のねらい



 (3) 本計画の基本方針



   本計画は、以上の基本的考え方に基づき、社会経済情勢等の変化を踏まえ、す

  べての働く人々の安全と健康の確保の実現を目指して、次に示す基本方針に立っ

  て策定したものである。



  ア 死亡災害の撲滅



    社会においてそれぞれの役割を担うかけがえのない存在である労働者が、生

   活の糧を得る過程で生命を失うことは、いかなる時代においても絶対に許され

   ることではなく、事業者を始め関係者はその防止に全力を傾注しなければなら

   ない。

    労働災害による死亡者数は、昭和56年以降17年間、2,000人台で一進一退す

   る状況が続いたが、平成10年に2,000人の壁を破り、平成13年には年間1,700人

   台になった。今後は、この着実な減少傾向を堅持し、死亡者数のより一層の減

   少を図る。





  イ 中小企業における安全衛生の確保



    我が国全体の安全衛生水準は、着実に向上してきているが、中小企業におけ

   る安全衛生管理は、必ずしも十分なものとは言えず、中小企業の労働災害発生

   率は、大企業に比べて高い状況にある。これら中小企業における安全衛生を確

   保するために、労働安全衛生関係法令に規定された最低基準としての労働災害

   防止措置の履行確保を図るとともに、中小企業の自主的な安全衛生活動の努力

   や集団的な取組を促進するなど適切な支援を推進する。





  ウ 業務上の心身の負担の増大等に対応した労働衛生対策の推進



    近年、一般定期健康診断における有所見率や職場生活等において強い不安、

   ストレス等を感じる労働者の割合も増加し続けており、これらを背景として、

   過重労働により誘発される脳血管疾患及び虚血性心疾患、業務による心理的負

   荷により誘発される精神障害等の労災の申請、認定件数も増加傾向にある。

    経営環境の厳しさが増す中、企業における組織の見直し等が進行し、業務の

   質的、量的変化等による心身の負担の一層の増加が懸念されており、我が国の

   社会の健全な発展という観点からも、職業性疾病予防はもとより、職場におい

   てより積極的に労働者の健康の確保を図る。





  エ リスクを低減させる安全衛生管理手法の展開等



    現下の経済環境は依然として厳しいが、いかなる社会経済情勢であろうとも、

   労働者の安全と健康の確保は企業経営において最も優先されるべき事項の一つ

   であり、企業内に組織と個人が安全を最優先する「安全文化」を根付かせ、自

   律的に労働安全衛生対策が企業内で推進される仕組みの確立を図ることが必要

   である。また、企業内には様々な種類の安全衛生に係るリスクが存在し、かつ、

   頻繁に変化していることから、リスクを減少させることが基本的な対策である。

    このため、事業者が労働者の協力を得て、「計画−実施−評価−改善」のサ

   イクルにより、リスクを評価し、そのリスクを低減させるための改善措置を実

   施し、安全衛生水準の段階的向上を図る労働安全衛生マネジメントシステムの

   事業場への導入を推進する。

    また、機械設備等については、それらを製造・輸入する事業者がリスクを的

   確に把握し、そのリスクを合理的かつ体系的に低減した上で、残存リスク等の

   情報とともに使用する事業者へ提供される仕組みの普及を図る。これを受けて、

   実際に使用する事業者が、調達した機械設備等について、使用状況に合わせた

   安全衛生対策を講じることにより残存リスクを低減させるとともに、リスク等

   の情報が機械設備等を取り扱う労働者に伝達される仕組みの普及を図る。





  オ 就業形態の多様化、雇用の流動化等への対応



    労働分野においても就業形態の多様化、雇用の流動化等を可能とする様々な

   規制改革が進められているが、その推進に当たっては、すべての労働者がいか

   なる働き方を選択したとしても健康で安心して働ける制度の整備が前提条件と

   なる。そのため、労働安全衛生関係法令の充実を始め、安全で健康に働くこと

   ができる職場を実現するための実効ある仕組みの整備を図る。

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