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(別紙)
I 改正に当たっての基本的な考え方
我が国において、退職金制度は、労働条件の一つとして大企業では広く導入されて
いるが、中小企業では大企業に比べると十分に導入されているとは言い難く、その支
給水準も低いなど、大企業と中小企業との間でいまだ大きな格差がある。一方、新し
い企業年金制度が創設された他、退職給与引当金制度の廃止の方向が示される等、退
職金・企業年金制度の見直しの動きもみられる。
こうした中で、中小企業退職金共済制度(以下「中退制度」という。)は、国が簡
便かつ加入が容易な退職金共済制度を提供することにより、単独では退職金制度を設
けることが困難な中小事業において、退職金制度を確保するために重要な制度であり、
今後とも、その果たすべき役割は大きい。特に、厳しい経済情勢が続く昨今において
は、社外積立として保全され、確実に支払いが行われる中退制度の退職金は、中小企
業で働く勤労者の退職後の生活資金として、その役割はますます大きくなっている。
一方、我が国においては、景気の低迷が長引き、金利や株価が極めて低い水準で推
移している。このため、一般の中退制度においては実際の運用利回りが予定運用利回
りを下回ることにより、責任準備金の積立不足が増大し、平成12年度末現在で
2,000億円を超える累積欠損金が存在する等厳しい財政状況となっている。累積
欠損金の存在は、本来得られるべき運用収入が得られないことにより積立不足が一層
拡大し、制度の財政の健全性を大きく損なうことになるとともに、制度運営に対する
信頼を損ね、ひいては加入者の減少を招くおそれもあることから、その解消を図る必
要がある。
このようなことから、基本退職金に係る予定運用利回りを見直すことは、中退制度
の加入企業労働者にとっては痛みを伴うものであり影響が大きいが、今後とも、中退
制度を維持し、その安定的な運営を図るため、早期に基本退職金に係る予定運用利回
りを見直すとともに、経済社会情勢の変化に的確に対応できる仕組みに改め、長期的
に安定した制度とする必要がある。
II 具体的な改正の内容
1 予定運用利回りの見直し
基本退職金の予定運用利回りについては、確実に累積欠損金の解消を図り、制度
の財政の安定化を図る観点から、現行の3.0%を引き下げ、1.0%とすること
が適当である。
なお、予定運用利回りを上回る運用実績を上げ、剰余金が生じた場合、それを累
積欠損金の解消にも充てるべきである。その際には、被共済者間の公平性等を勘案
して、剰余金の2分の1を累積欠損金の解消に、残りの2分の1を付加退職金の支
給に充てることを基本として、各年度ごとに当審議会の意見を聴くこととするべき
である。
2 退職金額等に係る規定の政令事項化
最近の激しい経済・金融情勢の変化に的確に対応し、予定運用利回りを見直すこ
とが可能となるよう、現在法律に規定されている予定運用利回りを前提とした退職
金額等について、政令事項に変更するべきである。
なお、退職金額等を見直す際には、必ず当審議会において調査審議を行うことと
し、十分に議論の透明性を確保するべきである。
3 勤労者退職金共済機構による資産運用の充実
厳しい経済金融情勢が続き、勤労者退職金共済機構における運用方法等が資産運
用結果に与える影響が大きくなっている中で、勤労者退職金共済機構による資産運
用の重要性が一層高まっている。
このため、資産運用に当たり、運用目標を明確化し、外部の専門家も含めた事後
評価を行い、運用管理・チェック体制を整備するとともに、情報公開について一層
の充実を図るべきである。また、資産運用の主体としての勤労者退職金共済機構の
責任を法律上明確にするとともに、より効果的な資産運用を行うため、規制の見直
しや資産運用の対象の拡大を図るべきである。
4 勤労者退職金共済機構の業務の見直し
勤労者退職金共済機構の業務のうち、最近の実績が減少している融資及びこれま
で実績がない保健施設等の設置については、特殊法人等改革の動向や社会経済情勢
の変化を踏まえ、廃止するべきである。
5 掛金日額の範囲の引上げ等
特定業種退職金共済制度における掛金日額について、関係業界等の意見も踏まえ
た上で、今後、必要に応じて引上げが可能となるよう、賃金の上昇等を勘案して、
掛金日額の範囲を見直すことを検討するべきである。
また、過去勤務通算月額の上限額について、これまでの掛金月額の推移等にかん
がみ、引き上げるべきである。
6 その他
(1)施行時期
予定運用利回りの見直しについては、責任準備金の積立不足の増大を可能な限り
抑える観点から、周知期間等を考慮しつつ、できるだけ早期に施行するべきである。
(2)加入促進対策の充実
中退制度を一層普及させることが必要であることから、関係機関等との連携を強
化するなど加入促進対策の充実を図るべきである。
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