タイトル:労働者の健康情報に係るプライバシーの保護に関する検討会中間取りま

     とめについて



発  表:平成12年7月14日(金)

担  当:労働基準局安全衛生部労働衛生課

                 電 話 03-3593-1211(内線5495)

                     03-3502-6755(夜間直通)






 労働省では、労働者の健康情報に係るプライバシーの保護に関する対策について検討

を行うため、平成11年3月より「労働者の健康情報に係るプライバシーの保護に関す

る検討会」(座長 保原喜志夫 天使大学教授)を開催してきたが、今般、別添のとお

り中間取りまとめを行った。概要は次のとおりである。







1 検討の背景



  平成8年1月の中央労働基準審議会建議「労働者の健康確保対策の充実強化につい

 て」において、健康診断の実施、再検査の実施、結果の活用、メンタルヘルス相談に

 当たって、労働者の健康情報に係るプライバシーの保護等の問題に十分配慮すること

 等が指摘されている。

  この建議等を踏まえ、本検討会は、労働者の健康情報に係るプライバシーの保護に

 関する問題点を整理するとともに、どのように対応する必要があるのか等について検

 討を行ってきた。労働者の個人情報の保護に関しては、個人情報保護に係る政府全体

 の取組みの情況等を踏まえ、さらなる検討を行う必要もあることから、今般、現時点

 における検討結果を中間的に取りまとめることとしたものである。







2 労働者の健康情報の範囲



  労働者の健康情報の範囲労働者の健康情報の範囲としては、以下のものが挙げられ

 る。

  ・ 労働安全衛生法及びじん肺法に基づく健康診断の結果

  ・ 保健指導や健康相談の記録

  ・ こころと体の健康づくり(トータル・ヘルスプロモーション・プラン:THP)

   に関する情報(健康測定結果、健康指導内容等)

  ・ 健康保険組合が実施する保健事業(人間ドック等)に関する情報

  ・ 療養の給付に関する情報(受診記録、診断名等)

  ・ 医療機関からの診療に関する情報(診断書等)

  ・ 有害因子への個人のばく露歴等







3 労働者の健康情報に関する当面の対応について



  (1) 健康情報の処理



    事業者は、法令により、その実施が事業者に義務付けられている健康診断につ

   いては、法令等に基づきプライバシーの保護に一定の対応を行っているが、それ

   以外の健康情報については、労働者のプライバシーの保護や健康情報の処理につ

   いての認識が必ずしも高いものとはいえない。一方、労働者も、自己の健康情報

   の処理について関心が低い傾向にある。また、個々の事業場における健康情報の

   処理に関するルール化の現状は明らかではない。

   このため、



   <1> 労働者は、事業場内で自己の健康情報がどのように処理されているのかに関

    心を持ち、健康情報の保護の必要性について認識を持つべきであると考えられ

    る。また、事業者も、事業場で処理している健康情報すべてが、労働者の個人

    情報であることに留意し、その保護の必要性を認識する必要がある。



   <2> 各事業場においては、健康情報の処理の各段階における管理体制等について

    衛生委員会等で審議し、産業医、その他労働者の健康管理等を行う医師(以下

    「産業医等」という。)や衛生管理者等の参画のもと、ルール化することが必

    要である。その中では、健康情報を使用する際の使用目的の明確化や、健康情

    報の管理責任者の明記等が盛り込まれることが望ましく、産業医等や衛生管理

    者等の役割を明確化する必要がある。



   <3> 事業者は、事業場で処理している健康情報の保護の必要性や、事業者が必要

    とする健康情報は必ずしも検査値や病名そのものではなく、就業上の措置や適

    正配置の観点から必要最小限の情報であることを認識し、これらを踏まえ、健

    康情報の処理に関するルール化を率先して行う必要がある。



   <4> 行政は、労働者の健康情報に関わる関係者の認識向上のために健康情

    報保護の必要性についての啓発を行うことが重要である。





  (2) 健康情報の開示



    事業者が保管している労働者の健康情報は、労働者本人の求めに応じて原則的

   には開示されるべきものと考えられる。事業者は、健康情報の収集、保管状況に

   ついて、労働者本人が知り得るように配慮しなければならない。





  (3) 小規模事業場における固有の問題



    小規模事業場は、必ずしも労働衛生活動が活発とはいえないといった状況にあ

   り、また、人的資源等が十分でないことも多く、事業場内において健康情報の処

   理体制を整備することが困難であると考えられる。事業場内に健康管理を行う医

   師や衛生管理者がいない場合には、健康情報の処理は衛生推進者等がその職務を

   果たすべきであると考えられる。





  (4) その他(メンタルヘルス等に関する健康情報の処理について)



    労働者のメンタルヘルス、HIV(HumanImmunodeficiencyVirus:ヒト免疫不全ウ

   イルス)感染症やウイルス性肝炎等の感染症及び色覚検査等の遺伝に関する健康

   情報は、社会的差別につながる可能性が大きい情報であり、その処理に当たって

   は、特別な配慮が必要である。







<用語の定義>



 本中間取りまとめにおいては、労働者の健康情報に関する用語を以下のように定義す

る。





  (1) 健康情報の処理



    健康情報の「処理」とは、当該事業場における事業に関連して行われる健康情

   報の収集、保管(開示を含む。)、使用をいう。





  (2) 健康情報の収集



    健康情報の「収集」とは、事業者及び担当者が、健康情報を当該事業場におけ

   る事業に関連して集めることをいう。





  (3) 健康情報の保管



    健康情報の「保管」とは、事業者及び担当者が、収集した健康情報を保存・管

   理し、その健康情報を廃棄することをいう。





  (4) 健康情報の開示



    健康情報の「開示」とは、当該事業場における事業に関連して収集、保管され

   た健康情報を、本人の請求に応じて、労働者本人にその内容等を示すことをいう。

   なお、開示については、新しい概念であり固有の問題もあることから、本中間取

   りまとめでは、健康情報の処理とは別項に分け記載することとする。





  (5) 健康情報の使用、利用及び提供



    健康情報の「使用」とは、収集された健康情報が利用及び提供されることをい

   う。健康情報の「利用」とは、当該事業場における事業に関連して使われること

   をいい、健康情報の「提供」とは当該事業場における事業に関連しない活動等に

   供することをいう。



 

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