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    清掃業等におけるダイオキシン類等の労働者へのばく露実態の

    把握に関する調査研究(ダイオキシン類による健康影響調査研究)





              (経過報告2)





              平成12年5月









 平成11年4月、労働省からの本調査研究の委託を受け、中央労働災害防止協会は

「ダイオキシン類による健康影響調査研究委員会」を設置し、廃棄物焼却施設関係労

働者の調査を実施し、本年3月、それまでに血液中ダイオキシン類濃度の分析結果が

得られた4施設について、血液中ダイオキシン類濃度の分析結果を経過報告したとこ

ろである。

 今回は、昨年11月に実施した豊能郡美化センター関係労働者の追跡調査の結果判

明した血液中ダイオキシン類濃度等について経過報告を行う。

 なお、豊能郡美化センター関係労働者については、今後も必要と考えられる労働者

については継続調査を行うことが望ましい。

 また、本調査研究の実施に当たっては、各委員のみならず、労働福祉事業団、関係

労災病院及び東京農業大学の関係者の御協力を得た。









   「清掃業等におけるダイオキシン類等の労働者へのばく露実態の把握に関する

    調査研究委員会(ダイオキシン類による健康影響調査研究委員会)」



                              委員長 高田 勗





1 経緯

  ダイオキシン類の問題について、我が国では、1980年代に廃棄物焼却施設の

 灰等からダイオキシン類が検出されたこと等を契機として、社会的関心が高まって

 きた。

  その後、平成10年9月に厚生省から、大阪府豊能郡美化センターの土壌等から、

 高濃度のダイオキシン類が検出されたとの発表があり、労働省は、直ちに中央労働

 災害防止協会に「豊能郡美化センターダイオキシン問題に係る調査研究委員会(委

 員長 高田 勗)」を設置し、その調査結果が平成11年3月26日に労働省に報

 告されるとともに公表された。

  その報告では、労働者の血液中ダイオキシン類濃度は、周辺住民と比較して高い

 レベルにあったものの、労働者から申告のあった疾病や自覚症状及び血液検査結果

 と血液中ダイオキシン類濃度との明らかな関連は認められなかったこと、並びに文

 献調査の結果からも、その血液中ダイオキシン類濃度は明らかな健康影響を引き起

 こすレベルではないとされた。

  また、平成11年3月30日、ダイオキシン対策関係閣僚会議で「ダイオキシン

 対策推進基本指針」が策定され、労働省は、労働者の健康状況及び労働環境の実態

 を把握することとされた。

  これらを受け、労働省では、平成11年度、新たに全国の廃棄物焼却施設に協力

 を求め、全国の12施設について実態調査を実施することとした。また、豊能郡美

 化センターについては焼却炉内作業等に従事した者について追跡調査を実施した。

  すでに本年3月、それまでに血液中ダイオキシン類濃度の分析結果が得られた4

 施設(平成11年8月〜9月調査実施分)について、血液中ダイオキシン類濃度の

 分析結果を経過報告したところである。

  今回、昨年11月に実施した豊能郡美化センター関係労働者の追跡調査の結果判

 明した血液中ダイオキシン類濃度等について経過報告を行う。

  なお、豊能郡美化センター関係労働者については、今後も必要と考えられる労働

 者については継続調査を行うことが望ましい。



2 調査対象者

  平成10年度に実施した豊能郡美化センター関係労働者の調査結果では、対象者

 を焼却施設関連度分類(注)で分類したW群が著明に高いダイオキシン類濃度を示

 すとともに、V群はT・U群より高かった。また、血液中ダイオキシン類濃度が

 100pg-TEQ/g-脂肪を超えた者は全てV群又はW群に含まれていた。このような

 状況から、追跡調査の対象者は、V群(13名)又はW群(15名)のうち本人が

 希望した者(23名)とした。



3 調査結果

  追跡調査対象者の血液中ダイオキシン類濃度の分析結果は、表1のとおりであっ

 た。追跡調査対象者23名の血液中ダイオキシン類濃度の平均値でみると、平成

 10年度調査では265.0 pg-TEQ/g脂肪であったのに対し、平成11年度調査では

 246.0 pg-TEQ/g脂肪と7.2%減少した。

  生化学検査及び免疫機能検査の結果は、それぞれ表2及び表3のとおりであった。

 なお、これらの検査項目のうち、血液中ダイオキシン類濃度と有意な相関が認めら

 れたものはなかった。

  調査対象者の皮膚視診の結果は、前年度の所見と比べ大きな変化はなく、ダイオ

 キシン類へのばく露によると疑われる所見は認められなかった。

  以上のことから、現時点でダイオキシン類の影響が疑われる疾病等は認められな

 いが、血液中ダイオキシン類濃度が高かった者については引き続き継続調査を行い、

 総合的な評価を行うことが望ましい。



(注)焼却施設関連度分類

  平成10年度の豊能郡美化センターに係る調査で用いた作業者分類で、T〜W群

 に分類した。T群は焼却棟(クレーン操作室を除く)に立ち入らない者、U群は焼

 却棟内には立ち入るが焼却炉関連設備内作業の支援作業には従事しない者、V群は

 焼却炉関連設備内作業の支援は行うが焼却炉関連設備内には立ち入らない者、W群

 は焼却炉関連設備内に立ち入って作業に従事する者をいう。なお、焼却炉関連設備

 とは、焼却炉、電気集じん器、湿式洗煙塔等を指す。




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