タイトル:平成11年版働く女性の実情



発  表:平成12年3月24日(金)

担  当:女性局女性労働課

                  電 話 03-3593-1211(内線5638)

                      03-3502-6763(夜間)




 労働省女性局では、毎年、働く女性に関する動きを取りまとめ、「働く女性の実情

」として紹介している。

 今年は、「T 働く女性の状況」で平成11年及び平成10年における働く女性の実態

とその特徴を明らかにするとともに、女性の失業状況及び男女間賃金格差について長

期的な傾向を紹介している。「U 大卒女性の就業意識と就業行動」では、我が国の

高学歴女性の労働力率について、大学卒業後は極めて高いものの、結婚、出産・育児

期で低下し、子育てが一段落した年齢層では、再就職希望者が多いにも関わらず、あ

まり上昇しないという特徴があることから、四年制大学卒の女性を中心に、その就業

意識や就業行動から継続就業や再就職を阻害している原因を探った。





平成11年版働く女性の実情のポイント



T 働く女性の状況



(1)平成11年の女性の労働力率は49.6%、労働力人口総数に占める女性の割合は

  40.6%で、それぞれ前年より低下した。労働力率が50%を割ったのは、平成元年

  以降10年ぶりである。

   また、M字カーブの底である30〜34歳層の女性の労働力率は56.7%で、前年に

  比べ0.9%ポイント上昇した。



(2)女性の完全失業率は、4.5%(男性4.8%)と、前年より0.5%ポイント上昇し

  過去最高の水準を示した。

   離職後に非労働力化しがちであるという女性労働者特有の動きが長期的に弱ま

  りつつあり、女性の失業率を押し上げている一因となっている。



(3)女性の雇用者数は、2,116万人(雇用者総数に占める女性の割合は39.7%)で

  前年より8万人減少(前年比0.4%減)した。

   また、事務従事者の雇用者数が724万人(前年比1.4%減)と比較可能な昭和28

  年以降初めて減少した。



(4)所定内給与額における男女間賃金格差は縮小傾向にある。企業規模別では中小

  企業で格差がかなり縮小している。



(5)女性の短時間雇用者(非農林業で週間就業時間が35時間未満の雇用者)は773万

  人で、前年より17万人増加した。





U 大卒女性の就業意識と就業行動



1 学歴別にみた女性の労働力率及び潜在的労働力率



(1)大卒女性の卒業直後の労働力率は極めて高く、ほとんどが就職するが、30歳代

  での落ち込みが大きく、子育てが一段落した後の年齢層では、再就職希望者が多

  いにもかかわらず、あまり上昇しないという特徴があり、「きりん型」を示して

  いる。



(2)大卒女性の潜在的労働力率は、20〜24歳層をピークに、40歳代までは80%前後

  の高い水準を維持しており、結婚、出産・育児等で退職する者のうちかなり多く

  の者が現実には就業を希望していると言える。





2 大卒女性の現状



(1)大卒女性は、経済的自立や生きがいを実現するために就職する意欲は強いもの

  の、就職状況は以前より厳しくなっている。一方、大学での専攻分野の多様化に

  伴い職業分野も拡がっている。



(2)高学歴の妻ほど晩婚化、晩産化が進展している。平均的な大卒女性のライフサ

  イクルとしては、20歳代後半に結婚、30歳代前半までに子供2人を出産し、30歳

  代は子育ての真っ最中となる。したがって、結婚、出産・育児等で退職した者が

  末子の小学校入学を機に再就業しようと考える頃は40歳前後である。





3 大卒女性が継続就業しない要因と対応策



(1)就業継続をするか否かの大きな要因は、大学卒業時の働き方に対する志向、仕

  事のやりがいの有無、労働時間の長短や就業継続しやすい制度の有無等の労働条

  件、家族の協力の有無である。



(2)大学卒業時の働き方に対する志向が実際の働き方に影響を与えており、卒業時

  の就業継続意思がその後の就業行動を支えている。



(3)大卒女性はスペシャリストや責任ある地位を志向しており、自己の適性・能力

  と仕事とのマッチングや、自己の能力・仕事に対する適正な評価と昇進が、仕事

  のやりがいにつながり、ひいては就業継続に結びついていく。

   大卒女性の実際に就いている仕事と就業行動との関係をみると、大卒女性は、

  「一般事務職」に就いている場合には、相対的に就業継続につながらない場合が

  多く、逆に「専門・技術職」に就いている場合には就業につながっている場合が

  多い。

   一方、事務職や教育職を希望する者が依然として多いが、現在事務的職業の求

  人状況は厳しく、今後も産業構造の変化や情報化の進展、技術革新等に伴い求人

  減少が予想され、また、少子化の中で教育職の求人減少も予想されることから、

  大卒女性の仕事に対する意識が変わらない限り、希望職種と求人側との間のミス

  マッチは引き続き起こりうる。



(4)以上から、継続就業を図るため次の対応策が必要である。

  イ 就業継続するか否かは大学卒業時の継続就業意思の有無に大きく関わってい

   ることから、学校教育の早い段階から自己の適性や仕事について考えていくよ

   う意識啓発を行うことが必要であること、また、自己の適性、能力と仕事内容

   のマッチングが仕事のやりがいにつながることから、進路指導と関連付けて適

   切な職業選択のための情報提供やカウンセリングを行うことが必要である。

  ロ 男女の処遇についての不平等感が強いと大卒女性は仕事のやりがいをなくす

   ことから、制度面での男女均等な雇用管理を実現するとともに、女性の能力発

   揮促進のための積極的取組(ポジティブアクション)を進めていくことが必要

   である。

  ハ 仕事と家庭責任とを両立しやすい環境の整備を図る観点から、柔軟な労働時

   間制度を普及していくこと等が必要である。





4 大卒女性が中断後再就業しない要因と対応策



(1)無業者の多くは子育てが一段落した後、経済的理由のほか、社会とのつながり

  や自己実現を求めて、就職に有利な専門知識や資格を身につけるなどして再就業

  することに意欲を持っている。

   希望する就業形態としては、当面はパート志向、将来的には正社員志向が多く

  仕事を選ぶ場合に重視することは勤務時間の弾力性、融通性にかかるものが多い

  が、年齢の高まりにつれ、仕事内容重視へのウエイトが高まっている。

   しかしながら、こうした大卒無業の女性が子育てが一段落し、知識や資格を身

  につけて再就職しようとする頃は40歳前後であり、企業側の中途採用時の年齢制

  限によって再就職が阻まれるという実態がある。また、女性側の勤務時間重視の

  意向が採用側と合わないことや、離職期間が長かった分自分の能力に不安を抱き

  資格や免許を取得し、新たな能力開発を行わないと再就職が難しいと考えている

  者が多い。

   なお、30歳以上の就業希望者が望む年収額は、103万円未満が3〜5割前後で

  税制などを意識した結果となっている。



(2)就業を希望しない理由としては、30歳代では育児負担、40歳代では趣味や自己

  啓発のためを挙げる者が多い。



(3)以上から、再就業を進めるため次の対応策が必要である。

  イ 大卒女性の大半は就業経験があり、潜在的に高い職業能力を持ちうることか

   ら、その意欲と適性に応じて再就業のための情報提供や職業能力の向上を支援

   することが重要である。行政としては、例えば自宅でインターネットの活用に

   より情報提供を受けることができるシステムの整備、ビジネスキャリア制度の

   周知・推進などが必要である。

  ロ 柔軟な働き方への転換として、企業においては、求人の年齢制限の緩和・解

   消を図るとともに、勤務時間を重視する再就業希望者のニーズに対応した、正

   社員のフレックスタイム制、短時間勤務制度などの本格的活用の方法を普及し

   ていくことも必要である。

  ハ 税制及び社会保険制度については、個人の選択に対して及ぼす影響をできる

   限り中立的なものとするという視点にも配慮し、検討されるべきものであるが、

   中には制度の誤解による就業調整の例もみられることから、併せて現行制度に

   ついての周知を図ることが必要である。





5 まとめ



  大卒女性が就業を継続、あるいは、結婚、出産・育児後再就業できるようになる

 ことは、女性にとっては自分のワークスタイルの選択の可能性を広げるとともに、

 企業にとっては潜在能力の高い労働力を活用できることになり、少子化時代の労働

 力確保に大きく寄与するものと思われる。

  今後、前記(3(4)及び4(3))の対応策を企業、行政が一体となって取り組むこ

 とにより、働くことを希望する高学歴の女性がその能力を十分に活かせる社会を実

 現していくことが重要である。

 

概  要


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