政府見解のポイント(平成11年4月22日)
1 立法改正による団結権保護の充実を怠ったこと (1)裁判による労働委員会命令の取消 憲法第32条、第76条第2項によれば、行政機関である労働委員会の命令に ついては、これを裁判で争うことは保障されなければならず、それゆえ司法の判 断として労働委員会の命令が取り消されることもあり得るところである。 (2)審級省略、実質的証拠法則 独占禁止法のような審級省略、実質的証拠法則を採用するか否かは、それぞれ の行政処分の専門性、特殊性や審査手続に応じた立法政策上の問題であり、この ような措置を採用しないことが団結権保護に欠けるものとは考えられない。 (3)実効性確保のための措置 労働組合法は、命令違反に対する罰則、緊急命令(使用者が命令の取消訴訟を 提起している場合に、裁判所は使用者に対して命令に従うべき旨を命じる制度) など不当労働行為に関する労働委員会命令の実効性を確保するための措置を規定 している。 (4)その他 ILOも「委員会は……最後の手段として公平な裁判所又は個人に解決策を委 ねるべきであると考えている。」旨指摘しており(結社の自由委員会による決定 と原則の概略、第4版(平成8年)パラ751)、団結権侵害に対する解決策と して裁判所における解決を予定している。 2 政府の解決に向けての努力について 政府としてはJR労使間の紛争を放置していたわけではなく、紛争の解決に向け て労使当事者に積極的な働きかけを行ってきたところであるが、JR労使間で大き な隔たりがあったところである。 今後も、政府としては、関係者の対応を見守りつつ、問題解決のために引き続き 努力してまいりたい。 3 新規採用方式を採用したことについて 国鉄改革において新規採用方式を採用したのは、国鉄が置かれた危機的な財政状 況にかんがみ、その改革に当たっては、長期債務、遊休資産等は可能な限り整理し、 従来の全国一元の公社制度とは異なる民間会社として全く新しい理念、体制の下に スタートすることが是非とも必要であったためであり、全動労、国労組合員を排除 し、事実上解雇することを目的としたものではない。