戻る
第1 労働行政を取り巻く情勢
1 経済社会の構造的な変化
我が国経済社会を見ると、高い実質経済成長率を期待し難い環境の中で、経済の
グローバル化、情報化、サービス経済化及び規制改革等に伴う産業構造の変化が急
速に進展しており、地域に大きな影響を及ぼす事業所の閉鎖・縮小の発生や労働力
需給のミスマッチの拡大が見られる。同時に、企業における能力主義、成果主義的
な賃金・処遇制度の導入など人事労務管理の個別化も進んでいる。
また、出生率の継続的な低下に伴い、労働力人口の伸びが鈍化するとともに、急
速な人口の高齢化が進展している。
さらに、女性労働者が増加し、また若年層を中心に就業意識の多様化が進展する
とともに、経済社会の国際化の中で我が国で就労する外国人労働者が増加している。
2 最近の経済情勢
我が国経済をみると、景気の改善に足踏みが見られ、先行きについては、アメリ
カ経済の減速や設備投資の鈍化の兆しなど、懸念すべき点が見られる。こうした中
で、雇用情勢は依然として厳しく、完全失業率がこれまでの最高水準で推移し、求
人の増加傾向にも足踏みがみられるところである。
政府としては、経済を自律的な回復軌道に確実に乗せるため、引き続き景気回復
に軸足を置きつつ、我が国経済を21世紀にふさわしい構造に改革することを政策の
基本としている。
3 労働基準行政を取り巻く情勢
厳しい経済情勢の下、労働基準監督署には、労働基準関係法令の違反に関する申
告や、解雇、賃金・労働時間等の労働条件の引下げ等に関する相談が数多く寄せら
れている。
平成12年における年間総実労働時間は1,859時間、所定内労働時間は1,720時間と
前年に比べて微増となっている。
労働災害による被災者数は、長期的には減少し、平成12年の死亡災害についても、
前年を下回る見込みとなっている。しかしながら、今なお年間約56万人が被災して
おり、このうち約2000人が労働災害により尊い命を奪われている状況にある。
一方、労働者の健康を取り巻く状況を見ると、職業性疾病の発生は、長期的には
減少しているものの、腰痛、じん肺等の疾病は依然として後を絶たない。
また、産業構造の変化、高齢化の進展等労働者を取り巻く環境が変化する中で、
一般健康診断の結果、脳・心臓疾患につながる所見を始めとして何らかの所見を有
する労働者が4割を超えるとともに、現下の厳しい経済情勢の中で、仕事や職場生
活に関する強い不安やストレスを感じている労働者の割合が増加している。
さらに、廃棄物焼却施設の解体作業に従事する労働者の血液中から高濃度のダイ
オキシン類が検出されるなど、ダイオキシン類問題が労働環境においても大きな問
題となっている。
労災補償の面では、「過労死」、「過労自殺」等の複雑・困難事案を始め社会的
にも関心を集めている労災請求事案が増加している。
4 職業安定行政を取り巻く情勢
最近の雇用失業情勢は、依然として厳しい状況にあるものの、新規求人は、増加
幅は若干縮小したものの、前年同月に比べると、情報通信技術などを中心に、サー
ビス業、製造業など主要な産業で広く増加を続けている。
公共職業安定所で取り扱う新規求人数は、平成12年度は前年同月比で増加が続き、
その増加幅も拡大傾向にあり、産業別に見てもサービス業、製造業など主要な産業
で増加が続いている。
一方、求職者数は、一進一退にあるものの、依然高い水準で推移している。これ
を態様別に見ると、事業主都合離職者は前年同月比で減少が続いているが、在職者
や自己都合離職者は増加傾向にある。
これらの結果、有効求人倍率は上昇しているものの、依然として低い水準で推移
している。
また、完全失業者数は、平成12年5月に3年1か月ぶりに前年に比べて減少する
など、月別に見て減少又は小幅な増加にとどまっているものの、依然として高い水
準で推移しており、それに伴って完全失業率も依然として高い水準で推移し、平成
12年12月、13年1月には2ヶ月連続で過去最高となった。
雇用者数は、平成12年5月に8か月振りに増加に転じて以降増加が続いている。
形態別に見ると、臨時雇が増加している反面、常雇は一進一退となっており、また
産業別に見るとサービス業が引き続き大きく増加している。さらに、規模別に見る
と500人以上の企業では増加傾向、30人未満では減少傾向にある。
年齢別に見ると、若年層の完全失業率は、厳しい雇用失業情勢にもかかわらず転
職志向が高まっていること等から、自発的な理由による離職者が多いことを背景に
依然として高水準で推移している。また、新規学校卒業者の就職環境は依然として
厳しく、未就職卒業者も増加傾向にある。平成13年3月卒業予定者の就職内定状況
についても、わずかに前年同期を上回ってはいるものの、昨年と同様の厳しい状況
となっている。
高年齢層は、有効求人倍率が依然として低く、一旦離職すると再就職が厳しい状
況が続き、非自発的な離職者ではその傾向が顕著である。特に中高年ホワイトカラ
ー求職者の失業期間が長期化している。
企業の雇用過剰感は、産業別、規模別に見ても低下傾向にあり、先行きも低下が
見込まれている。また、雇用調整の実施事業所割合については、その水準は高いも
のの低下傾向にあり、その方法としては「残業規制」が中心となっている。
一方、事業再構築計画等に基づいて、地域に大きな影響を及ぼす大規模な事業所
の閉鎖・縮小が生じ、地域全体において多数の離職者が発生し、雇用不安が広がる
例も見られる。
さらに障害者についても公共職業安定所に届出のあった解雇数が依然として高い
水準で推移するとともに、有効求職者数が13万人を超え、過去最高となるなど厳し
い状況が続いている。
5 雇用均等行政を取り巻く情勢
我が国の女性雇用者数は昭和51年以降堅調に増加し、平成10年からは厳しい経済
情勢を反映して減少に転じたが、平成12年は前年より24万人増加し2,140万人とな
った。こうした中で、女性の完全失業率が高い水準で推移するなど、女性の雇用を
取り巻く環境は依然として厳しい状況にある。
また、女性労働者の平均勤続年数の伸長や、結婚、出産後に働き続けることを希
望する女性の増加が見られる一方、合計特殊出生率の下降傾向は止まらず、平成11
年には過去最低の1.34となるなど少子化が進展しているが、その背景として仕事と
子育ての両立の負担感が増大していることが強く指摘されている。加えて、平均寿
命の伸長による高齢化に伴う要介護者の増加等により、男女を問わず、働きながら
介護の負担を担わなければならない者が今後ますます増大することが見込まれる。
さらに、パートタイム労働者は顕著に増加してきたが、平成12年は減少し、週間
就業時間が35時間未満の非農林業の雇用者数(休業者を除く。)は1,053万人とな
り、そのうち女性は71.6%に当たる754万人となった。
TOP
戻る