タイトル:60歳台前半層への雇用延長の課題は賃金体系

     (平成12年雇用管理調査結果速報)



発  表:平成12年6月21日(水)

担  当:労働大臣官房政策調査部産業労働調査課

             電 話  03-3593-1211(内線5247)

                  03-3502-6729(夜間直通)




I 調査の概要



 1 雇用管理調査は、民営企業における労働者の採用から退職に至るまでの一連の

  諸管理の状況を明らかにするため、テーマを採用管理、採用後の諸管理、退職管

  理に分け、毎年、実施しているものである。

   平成12年調査においては、企業における退職管理に関する事項について調査を

  行った。



 2 調査対象は、鉱業、建設業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業、運輸・通

  信業、卸売・小売業,飲食店、金融・保険業、不動産業、サービス業 (その他の

  生活関連サービス業のうち家事サービス業、教育及び外国公務を除く。)に属する

  本社の常用労働者が30人以上の民営企業のうちから産業、企業規模別に層化して

  無作為に抽出した5,830企業(回収率81.4%)である。

   調査は、平成12年1月1日現在(一部の調査事項は、平成11年1月〜12月まで

  の1年間)の状況について行ったものである。





II 調査結果の概要



〔骨 子〕



1 定年制等



(1) 定年年齢を60歳以上とする企業は、一律定年制を定めている企業の99.2%。

   61歳以上とする企業は7.6%で、これに、定年年齢を61歳以上に改定すること

   を決定又は予定している企業を含めると12.2%。企業規模別にみると、おおむ

   ね規模が小さいほど定年年齢が61歳以上である企業の割合が高い。



(2) 定年年齢を61歳以上とする理由は、「経験、能力の活用」とする企業が最も

   多く55.7%、次いで「社会的要請」34.7%、「年金支給開始年齢の引き上げに

   向けての体制作り」32.0%などとなっている。





2 定年後の措置



(1) 勤務延長制度又は再雇用制度がある企業は、一律定年制を定めている企業の

   67.0%。勤務延長制度のみ又は再雇用制度のみの企業で最高雇用年齢を定めて

   いない企業は、それぞれ64.0%、49.8%であるが、最高雇用年齢を定めている

   企業では65歳とする企業が大多数である。



(2) 勤務延長制度、再雇用制度の適用対象者の範囲は、「会社が特に必要と認め

   た者に限る」とする企業が最も多くそれぞれ44.1%、52.1%で、「原則として

   希望者全員」とする企業はそれぞれ26.3%、21.1%となっている。



(3) 適用対象者を限定した勤務延長制度、再雇用制度において、希望者に占める

   適用対象者の割合は、「30%未満」がそれぞれ38.6%、38.1%と最も多く、次

   いで「70%以上」がそれぞれ23.4%、23.6%。



(4) 勤務延長後、再雇用後の処遇の変化に関して、役職、資格については、勤務

   延長後では、「変わらない」とする企業が役職では37.7%、資格では43.9%と

   最も多いが、再雇用後では「変わる」とする企業が役職では55.6%、資格では

   49.1%と最も多い。また、仕事の内容については、勤務延長後、再雇用後とも

   「変わらない」とする企業がそれぞれ72.4%、64.4%と最も多く、賃金につい

   ては、勤務延長後、再雇用後とも「下がる」とする企業がそれぞれ50.5%、

   72.9%と最も多い。





3 その他の退職管理



(1) 中高年齢労働者等の進路選択に関する諸制度の導入割合は、「関連会社等へ

   の転籍出向制度」2.5%、「早期退職優遇制度」6.8%、「転職援助あっせん制

   度」 0.7%、「独立開業支援制度」1.7%。5,000人以上の大企業では、「関連

   会社等への転籍出向制度」は35.2%、「早期退職優遇制度」は58.2%、「転職

   援助あっせん制度」は 26.4%、「独立開業支援制度」は17.3%と他の規模よ

   り高い。



(2) 中高年齢労働者等の進路選択に関する諸制度の適用開始年齢を5,000人以上

   でみると、「転籍出向制度」では55歳以上、「早期退職優遇制度」では50歳台

   前半、「転職援助あっせん制度」、「独立開業支援制度」では40歳台後半が最

   も多い。





4 今後の課題



(1) 60歳台前半層に対する雇用延長の課題は、「賃金体系を別体系にする」とす

   る企業が定年延長、勤務延長・再雇用でそれぞれ36.5%、46.6%と最も多い。

   次いで、「健康面への配慮」がそれぞれ28.8%、40.4%、「作業能率低下の防

   止」がそれぞれ23.1%、30.0%となっている。



(2) 雇用慣行の現在の状況は、管理職、一般職ともに自社で定年まで大部分雇用

   しているが定年後は関与していないとする企業がそれぞれ37.6%、39.1%と最

   も多く、次いで、定年後もかなりの人数を継続雇用している企業が多い。



(3) 雇用慣行について今後の変化をみると、管理職、一般職とも「現在と変わら

   ない」とする企業が6割を超えている。





主な用語の説明



「定年延長」 ………………定年年齢自体を引き上げることをいう。

「勤務延長制度」 …………定年年齢が設定されたまま、その定年年齢に到達した者

             を退職させることなく引き続き雇用する制度をいう。

「再雇用制度」 ……………定年年齢に到達した者をいったん退職させた後、再び雇

             用する制度をいう。

「高齢者子会社」 …………高齢者を雇用することを目的として設立された子会社を

             いう。

「関連会社」 ………………取引会社、下請け会社等をいう。

「あっせん先を外部委託」…アウトプレースメント(再就職のためのコンサルティン

             グを行う会社)や職業紹介事業を営む会社に委託するこ

             とをいう。

「転籍出向制度」 …………出向元との雇用関係を終了させ、関連会社等の出向先と

             の間において雇用関係を結び、出向先で働く形の出向制

             度をいう。

「早期退職優遇制度」………定年到達以前に退職する場合、退職金などで優遇する制

             度をいう。

「転職援助あっせん制度」…転職する者に対して、転職先のあっせんや転職準備のた

             めの教育の実施等により転職を支援する制度をいう。

「独立開業支援制度」………独立のために退社し、新たに事業を行う社員に対して、

             資金援助や独立後の事業協力等を行うことにより、その

             独立開業を支援する制度をいう。



 統計表等に用いてある符号の意味は、次のとおりである。

   「M.A.」は、複数回答であることを示すもので、構成比の合計は100.0を超

   える場合がある。

   「―」印は、該当数値が得られないものを示す。

   「*」印は、該当企業数が少ないため公表しないものである。

 

V 調査結果


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