社会関係資本としての労働組合─出会いとボランティア
要約
存在感の低下により,労働組合に対する理解があいまいになっている。労働組合は,今日,経済的・政治的アクターとみなされているが,相互扶助の連帯からなる労働組合は,元来,極めて社会的な存在である。雇用システムの諸機能に対する語りや理解がアップデートされてきたなかで,労働組合の説明は変わらないままとなっている。そこで,社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)理論にもとづき労働組合の機能について考察した。伝統的な日本的雇用システムにおける企業別労働組合は「結束型」社会関係資本の典型とみなせるが,本研究では,労働組合が今日,果たしている役割を理解するために「橋渡し型」社会関係資本としての面に着目した。具体的には,私的な出会いと社会貢献活動への参加という,個人の水平方向と垂直方向のネットワーク形成に労働組合がどのように寄与しているのかについて考察した。その結果,労働組合は橋渡し型社会関係資本として機能していることが確認された。とくに橋渡し型社会関係資本として機能する際,労働組合同士のネットワークの結束が要になっていることが明らかになった。この発見は内向きの姿勢を外向きに改めていくことが求められている労働組合にとって実践的な含意となる。なぜなら,自組合の外側に複数組合による境界を形成することで,組合員を外に開放しつつ,労働組合の中に閉じ込めることが可能になるからである。社会関係資本の研究は膨大に存在するが,日本の労働組合に関する研究は行われておらず,本研究は労働組合研究に新たな活路を拓くものである。
2025年特別号(No.775) 自由論題セッション●第3分科会
2025年1月27日 掲載