副業時間からみるフリーランスの就業条件─個人年収の男女比較から

要約

仲 修平(明治学院大学准教授)

フリーランスは組織による拘束度の低い自由な働き方であるために,複数の仕事を同時に保有することが雇用労働に比べて容易な就業形態である。しかし,副業を持つことがフリーランスの就業条件に及ぼす影響は十分に検討されているわけではない。そこで本稿では,フリーランスにとっての副業という選択肢が個人年収の多寡にどの程度影響を及ぼすのかを,「副業時間の水準」と「就業時間に占める副業時間の比率」の観点から検討する。分析の結果,主に以下の3つの知見が得られた。第一に,男女ともに副業時間の増加が個人年収を高める傾向ではないことが示された。第二に,副業時間の比率が高くなるほど年収は下がる傾向であった。第三に,本業が専門職であったとしても,副業時間の比率が高くなることによって年収が上昇するわけではないことが明らかとなった。ただし,その影響の仕方は男女によって異なっていた。男性の専門職では,副業時間の比率が低い層で年収の予測値が高く,比率が高くなるほど徐々に年収の予測値が下がる傾向となっていた。それに対して女性の専門職では,副業時間の比率によって年収はほぼ変わらない一方で,非専門職では比率が高くなるほど年収が下がる傾向であった。以上の結果を踏まえて,統一論題「フリーランスの就業と法─自由かつ安心して働ける就業機会の実現に向けて」に資する論点を提示する。


2025年特別号(No.775) パネルディスカッション●フリーランスの就業と法

2025年1月27日 掲載