子育てと女性の就労─国勢調査を用いた過去40年の就業の変化

要約

深井 太洋(学習院大学准教授)

本稿は,少子化や男女間の賃金差と密接に関連する子育てと仕事という課題に焦点を当て,過去40年にわたる日本の『国勢調査』データを用いて既婚女性の働き方を記述する。特に,出産後の所得や就業に関するchild penaltyや「年収の壁」といった制度上の問題が既婚女性の就労に与える影響を念頭に,子育てに伴う親の就労の変化と,誰がどのように働いているのかを整理する。分析の結果,1980年から2020年にかけて20〜40代の女性の就業率が大きく上昇し,その背景には子どものいる既婚女性の就業率の上昇が大きく寄与していることがわかった。出産直後の女性の就業率は依然として低いものの,育児休業制度の普及により就労を継続する人が増加していることが示唆された。特に,出産直後も就労を続ける女性は医療や福祉の専門職に多く見られ,子どもが成長するにつれて就労復帰するものの,パートタイムでの就労というケースも多くみられた。一方,『国勢調査』からわかる子どものいる男性の就労状況は過去40年を通して大きな変化はなかった。


2024年8月号(No.769) 特集●家族と労働

2024年7月25日 掲載