ケア労働に労働法はいかなる立場をとるべきか─介護労働及び家事労働に焦点をあてて
要約
従来,家族が主たる介護者であったが,少子高齢化の進展により,将来的にはそれが困難になるとの見通しのもと,介護保険法が1997年に制定,2000年に施行された。すでに同法施行後25年近く経ち,少子高齢化はさらに進んでいる。単身世帯の増加といった,家族のあり方が大きく変容しつつある中で,介護休業や介護保険等介護をめぐる公的な制度は家族の存在を前提に構築されているが,実際には家族のみで対応するのはむずかしくなっており,介護労働者にくわえ,家事労働者も炊事・洗濯のほかに介護サービスを提供することで介護需要に応えている。本稿は,法的な観点から介護労働者・家事労働者といったケア労働者の保護のあり方について検討しようとするものである。まず,介護労働者について,公益財団法人介護労働安定センターによる調査に基づき現状を見た上で,同労働者を保護するための法律や通達,介護報酬に上乗せされる介護職員処遇改善加算,研修制度等について検討する。ついで,家事労働者については,独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った調査により現状を見た後,裁判例や当該裁判例をきっかけに作成された厚生労働省によるガイドラインを考察している。
2024年8月号(No.769) 特集●家族と労働
2024年7月25日 掲載