人口高齢化と自動化が労働市場に与える影響─サーベイ

要約

姜 茗予(復旦大学助教)

佐野 晋平(神戸大学大学院教授)

人口の高齢化は,労働者の構成だけではなく,資本の構成の変化を通しても,労働市場に影響を与える。同時に技術の変化は労働や資本への影響を通し労働市場に影響を与える。人口構造の変化,技術と労働市場に関する研究は労働問題研究において中心的課題であるが,近年の人口高齢化と技術の進展を反映し,資本のうち産業用ロボットに代表される自動化資本の導入の影響について多くの研究が蓄積されている。本稿の目的は,人口高齢化と,自動化と労働市場への影響に関する近年の研究を概観することである。まず,人口の高齢化は,自動化資本の導入と関連がある。さまざまな国での実証研究によると,自動化資本の導入により,雇用に負の影響を与えるものもあれば,そのような傾向が観察されない場合もある。このような国による結果の違いは,各国の産業・職業構造の違いによることが示唆される。また,自動化は職務の相対的コストを変えることを通して,労働者の賃金,人的資本蓄積そして職業選択に影響を与える。さらに,これらの影響は,若年労働者と高齢労働者により異なることが示唆される。


2024年7月号(No.768) 特集●人口減少社会における労働・社会保障問題

2024年6月25日 掲載