少子化対策の30年を振り返る
要約
1975年以降,合計出生率が一貫して2を下回り続けたにもかかわらず,1.57ショックまで,日本では少子化が問題視されることはなかった。1.57ショック以降,政府はさまざまな少子化対策を実施してきたが,出生率の低下には歯止めがかかっていない。さらに,出生率の地域間格差も拡大し東日本で出生率がより低い傾向が顕著になり,今後は特に東北地方で人口減少と高齢化が深刻化することが予測されている。そこで,本論文では第1に,1.57ショック以降の日本の少子化対策の歴史を,1990年代,2000年代(民主党政権以前),民主党政権時代,第二次安倍内閣以降の4つのフェーズに分けて,少子化対策の特徴を議論した。第2に,出生率と人口移動に着目して,「地方創生」が政策目標として掲げられた2010年代半ば以降,むしろ東北地方の出生率が顕著に低下し,若年女性の転出率が上昇したことを示す。第3に,近年の少子化対策に関する実証研究を包括的にサーベイし,先行研究が示している傾向を述べる。最後に,これらの考察に基づいて,今後の少子化対策として,押さえておくべき論点を7つ挙げる。
2024年7月号(No.768) 特集●人口減少社会における労働・社会保障問題
2024年6月25日 掲載