多様化する雇用管理区分と処遇差に関する法規制

要約

阿部 未央(東北学院大学教授)

パート有期法8条は,非正規労働者に対する不合理な待遇の禁止を規定する。近年は,同条の前身となる労契法20条裁判が各地で起こり,正規・非正規労働者間の処遇格差を不合理と判断するいくつもの最高裁判決がだされている。裁判例における非正規労働者の処遇改善を通じて,正社員中心の日本的雇用システムを念頭に制度化された賃金制度や人事施策の一部見直しが要請されている。そのような企業の経営判断は尊重されるものの,手当・休暇付与の趣旨が非正社員にも妥当する場合には,正社員にだけ付与することは不合理であると判断される。当該企業における「正社員」の位置づけなしに,「有為人材獲得」「人事政策上の合理性」といった抽象的な理由付けで処遇格差を正当化することは難しくなりそうである。有期労働契約からの無期転換労働者については,パート有期法8条の適用はなくなるが,なお非正規的な扱いをうけており,労使自治が期待できない現状では,公序等を通じて救済を認めてもよい場面があるのではないかと考える。多様な雇用管理区分が望ましい形でひろがっていくために,企業は非正規労働者に限らず,無期転換者を含む労働者間の賃金や待遇の相違を合理的に説明できることが求められる。


2023年12月号(No.761) 特集●多様な属性の正社員

2023年11月27日 掲載