正社員の多様化と男女の職域分離・賃金格差

要約

川口 章(同志社大学教授)

本研究の目的は,正社員の多様化が,男女の職務分離や賃金格差の要因となっているか否かを明らかにすることである。女性限定正社員が特定の職種に集中すると,限定正社員制度の普及によって男女の職域分離が発生する。また,正社員に占める限定正社員の割合が,男性より女性で高く,無限定正社員と限定正社員の賃金格差が大きい場合には,限定正社員制度が男女間賃金格差を生む。本研究では,「職務限定正社員」「勤務地限定正社員」「時間限定正社員」の3種類の限定正社員を取り上げる。どのような属性の正社員がそれぞれの限定正社員になりやすいか,それぞれの限定正社員は無限定正社員より賃金が低いかについて,企業調査と労働者調査を統合したデータを用いて分析する。分析の結果,以下のことを発見した。限定正社員は,非正社員と共通の特徴を多く持っている。女性,低学歴,有配偶,役職に就いていない,昇進意欲が低い等である。さらに,人的資本の属性を調整したうえでも,女性の勤務地限定正社員と時間限定正社員は,それらを限定されていない正社員と比べて,それぞれ2割ほど年収が低い。ただ,職務については,正社員と非正社員の差のような極端な偏りはない。今後,もし限定正社員が増加すれば,それが男女間賃金格差の要因となる可能性は否定できない。


2023年12月号(No.761) 特集●多様な属性の正社員

2023年11月27日 掲載