日本における移住労働者の組織化と労働組合の役割─多元的な活動領域と取り組みの意義

要約

惠羅 さとみ(法政大学准教授)

本稿では,日本の労働組合による移住労働者の支援活動と組織化について,既往研究の整理を通じてその経緯と特徴を概観する。労働運動の主流である企業別労働組合の取り組みが遅れる一方で,1990年代以降,個人加盟ユニオンやNPOなどの地域組織を中心とした活動が進展してきた。日本の受け入れ政策は2018年改正入管法を期にようやく正面からの労働者の受け入れに転換しており,移住労働者の社会統合をめぐる施策は始まったばかりである。労働組合による運動は,代表的ないくつかの組織による労働相談などをきっかけとした問題解決が先行し,それがネットワーク化される中で市民運動などとも連携しながら,次第に政治的影響力を持つようになっている。そこでは,国際規範を用いた移住労働者の権利擁護などが省庁交渉などを通じて進められるとともに,主流の労働運動やナショナルセンターによる権利保障や支援の動きなどが促されてきた。また経済的な領域においては,労働組合は,労働災害などをめぐる労働安全衛生の取り組み,不払いなどの労働問題に対する取り組み,妊娠・出産をめぐる不当な取り扱いに対する取り組みなどに重要な役割を果たしてきた。運動の課題としては,組織運営における「駆け込み型」からの脱却,また長期的視野に立った戦略と労使関係構築の必要性などが指摘されている。今後の論点としては,移住労働者自身が主体となった取り組み,ビジネスと人権などの国内外における新たな規範,受け入れ政策の転換点における転職等の移動の促進などへの対応が挙げられる。


2023年12月号(No.761) 特集●多様な属性の正社員

2023年11月27日 掲載