正社員として働く女性が増えているのか?─両立支援から活躍支援へ

要約

佐藤 博樹(東京大学名誉教授)

本稿では,まず「正社員」が何を意味するかを検討する。つぎに『就業構造基本調査』を利用して,「正社員」に対応する可能性が高い「正規の職員・従業員」の推移を男女別に取り上げる。さらに,企業の人材マネジメントにおける正社員,その中でも中核人材に近いと想定される総合職の雇用管理などを,主に女性を対象として分析する。こうした分析を通じて,正社員のなかでも中核人材に近いと想定される総合職に女性が進出できているかどうかを確認する。『就業構造基本調査』によると,1992年から2012年にかけて男女共に正社員は減少傾向にあったが,正社員女性は2012年から2022年にかけて増加に転じ,正社員に占める女性比率も回復した。しかし正社員は男性が中心の雇用形態である。均等法施行や育児・介護休業法施行,さらにそれぞれの改正などを背景に,企業における人材マネジメントが変化し,正社員のうちの中核人材である総合職にも女性が進出してきている。しかしいまだに総合職は男性が主となる。それに加えて,総合職に配置された女性は,担当業務や上司のアドバイスなど能力開発機会において男性と比較して劣位な立場に置かれている。こうした結果,総合職女性が増えても,管理職に占める女性が増加するテンポは鈍い。また,総合職を含めて,正社員女性では,育児休業や短時間勤務を利用して継続就業する者が増加したが,両立支援制度を長期に利用する継続就業の在り方は,女性の能力開発機会にマイナスに影響している。


2023年12月号(No.761) 特集●多様な属性の正社員

2023年11月27日 掲載