戦略コンピテンシーと人材コンピテンシーが人事担当者の職務満足に及ぼす影響─交互作用効果に着目して

要約

厨子 直之(和歌山大学准教授)

井川 浩輔(琉球大学准教授)

本研究の目的は,人事担当者が経営戦略への貢献と労働者の能力発揮のための環境整備の双方の要求に応える人事コンピテンシーを発揮することが,彼(彼女)らの職務満足にどのような影響を与えるのかを定量的に明らかにすることである。従来,人事担当者が発揮するコンピテンシーの実態については議論されてきたが,人事コンピテンシーがどのようなものから構成されており,それらがどう個別的または相互補完的に発揮されるべきかについて定量的に検証されたケースはまだ少ない。本研究では,日本企業の人事担当者を対象に実施された質問票調査から得られたデータのうち,140名分のサンプルを分析対象としている。分析の結果,人事担当者の職務満足に対して,1)経営戦略の実現に求められる「戦略コンピテンシー」,労働者の能力発揮のための環境整備に関連する人材コンピテンシーに含まれる「労働法務コンピテンシー」による主効果は非有意である一方,人材コンピテンシーを構成するもう1つの「能力開発コンピテンシー」による主効果は有意な正の値であったこと,2)戦略コンピテンシーと労働法務コンピテンシーとの交互作用項が有意な正の関連を示していたのに対し,戦略コンピテンシーと能力開発コンピテンシーの交互作用項は有意でなかったことが示された。これら発見事実から,戦略コンピテンシーと人材コンピテンシーを同時に発揮することが重要であるが,戦略コンピテンシーと相性が必ずしも良くなく単独で発揮した方が望ましい人材コンピテンシーも存在することが示唆される。

【キーワード】人事労務一般,職業心理,能力開発


2022年10月号(No.747) ●研究ノート(投稿)

2022年9月26日 掲載