「新しい働き方」における集団の意義─韓国20年間の軌跡からの示唆

要約

安 周永(龍谷大学教授)

本稿は,企業別労使関係が日本と同様に定着し,労働組合の企業横断的な組織化と労使交渉が困難にもかかわらず,日本よりも労働組合が積極的にプラットフォームワーカーの組織化と待遇改善に取り組んでいる韓国の事例を検討することで,日本の「新しい働き方」における集団の意義と労使関係の課題について考察する。プラットフォームワークは,形式上労働者としてではなく,独立契約者として行われるため,従来の労働者と自営業者の二分法の下では,これらの人々は排除される。そのため,各国で政策転換が求められ,経済法や労働関係法の改正に加え,社会保障制度の改革などさまざまな政策的対応が試みられているが,これをめぐる対立も激しく,成果は依然として一部の国に限定されており,政策転換は容易でない状況にある。こうした中,韓国では,ヨーロッパの労働組合に比して未だ十分とは言い難いものの,「特殊形態勤労従事者」に関する20年余りの論争や取り組みを踏まえ,労働組合がプラットフォームワークにおける組織化と労使交渉を積極的に進め,一定の成果を挙げている。韓国では日本と同様,不安定労働者の脆弱な労働環境と過小代表性は,企業別の労働組合と労使関係が元凶と指摘されてきたが,徐々に不安定雇用の時代における新しい労使関係が形成されつつある。これら新たな動きが,企業別労使関係における従来の集団というものをいかに変化させてゆくかは,日本の視点からも注目すべきであろう。


2022年10月号(No.747) 特集●労使関係における集団の意義

2022年9月26日 掲載