経営側から見た「集団」の意義

要約

田中 恒行(社会保険労務士)

本稿は戦後の日本の労使関係において,経営側が「集団的労使関係」にいかなる意味を見出してきたのか,また今後経営側にとって「集団」がいかなる意味をもちうるのかをテーマに論じることを目的とする。戦後の集団的労使関係は1990年代を境にして大きく2つの時期に分けられる。前半においては,主として正社員により構成される企業別労働組合を中心とした「ほぼ単一的な」労働者集団が,従業員を一律に統率するために強い影響力を持っていた時代である。企業内労働組合を中心とした「単一的な労働者集団」の下での集団的労使関係における労使の協調体制の「象徴的事象」として,労使間の成果配分の考え方について論じる。後半においては,いわゆる「労使関係の個別化」が進展している。いわゆる「バブル崩壊」に伴う日本経済の失速に伴い,成果主義や目標管理といった個々の従業員を個別に管理する手法が浸透する一方で,従来の集団的労使関係の枠内に収まり切らない形態の労働者も増えてきている。個別化・多様化の傾向にある成果配分の対象としての「労働者集団」がいかなる変容を遂げうるか,それを経営側がいかに受け止めるかについての問題提起を行う。最後にまとめと結論として,21世紀の集団的労使関係におけるソーシャル・パートナーとしての労使のあり方について私見を述べることとする。


2022年10月号(No.747) 特集●労使関係における集団の意義

2022年9月26日 掲載