「男女平等参画」から「クミジョ」へ─労働組合における女性の代表性の現状と課題

要約

本田 一成(武庫川女子大学教授)

本稿は,労働組合における女性の代表性について考察する。4つの系統に整理される先行研究を渉猟した文献調査の結果,女性役員を詳細に探究する研究が欠如していることを見出した。それを踏まえて女性の組織現勢と代表性を検討したところ,労組は依然として男性型組織であり,女性役員はマイノリティであるとともに,役員就任を阻む「壁」や退任志向を強める「崖」が存在していた。女性役員は女性の代表者としての役割には否定的で,不満は強く仕事意識は低調であるにも関わらず,増員計画が進行中である。その結果,女性役員の増員や配置は芳しくないが,一方では女性の情勢やハラスメントなどに関する敏感な意識が見られ,潜在的にオピニオンリーダーの役割が大きいことが示唆される。これらを総合した女性役員の再評価と再定義が不可欠であり,労組活動の実践上は女性役員の空洞化,女性役員増員の不全と微弱なプレゼンス,女性増員を推進する協議や合意の欠如などが懸念される。また,増員計画という手段の目的化や,形式上の男女平等の過度な一般化による女性役員の無力化などが推測されることを勘案すると,実質的な女性の代表性の向上は脆弱である。今後のこの分野の研究においては男女平等の探求のために労組を分析することのみならず,本稿が拓いたように,女性役員の意識や行動を起点とした第5の研究領域の重要性を認識すべきである。


2022年10月号(No.747) 特集●労使関係における集団の意義

2022年9月26日 掲載