日本的雇用慣行における集団─労使関係と賃上げを中心に

要約

呉 学殊(JILPT統括研究員)

1990年代初頭バブル経済の崩壊以降約30年間,基本的に日本の賃金が上がらない。他の先進諸国及び韓国は上がり続けて,日本の賃金は国際的に低い水準である。日本の場合,労働組合の組織率の低下,労働協約の拡張適用のなさ,労働組合の集団力(労働争議)の未行使などが賃金の上がらない要因といえよう。いっぽう,株主への配当金や内部留保はほぼ毎年上がっている。一部の労働組合は,非正規労働者の組織化,子会社労働者の組織化,職種別労働組合の結成などを通じて,集団力の拡大・強化を図っている。しかし,組織率の低下が止まらない中,代案集団として従業員代表制の法制化が必要。韓国の場合,1980年の法制化により,30人以上の企業で労使協議会が設置・運用されており,その結果,企業経営の透明性,労働者の企業経営への参加性,主体性の発揮,納得性という「4つの性」が確認される。日本は,賃上げに向けては労働組合の労働三権のフル行使により組合要求の獲得,従業員代表制の法制化により無組合企業での労使対等性の確保,労働組合のさらなる組織化が求められる。それが実現すれば,雇用関係の高度化による生産性向上や事業の高付加価値化,グローバル展開による企業の発展も期待できる。


2022年10月号(No.747) 特集●労使関係における集団の意義

2022年9月26日 掲載