夫の転勤と妻の同居・就業選択

要約

関島 梢恵(公益財団法人NIRA 総合研究開発機構研究コーディネーター・研究員)

阿部 眞子(大阪大学大学院国際公共政策研究科博士後期課程)

本研究は,夫に転居を伴う転勤が生じた際の妻の同居と就業の選択を分析する。使用するのは1994年から2019年までの『消費生活に関するパネル調査』で,過去1年の夫の転勤の有無とともに,その前後における妻の同居状態と就業状態がわかる個票データである。分析ではまず,夫に転勤があった際に妻が夫とともに転居しているかどうかと,その際の就業状態の記述統計を整理し,2000年代と2010年代を比較して変化が起きているかを調べる。次に,夫に転勤が生じたサンプルをプールして,妻の同居と就業の同時決定を考慮した推定を行い,同居選択と就業選択の相関を確認するとともに,これらの選択にかかわる個人の属性を明らかにする。特に,夫婦の居住選択と妻の就業行動に重要な影響を及ぼすと考えられる子どもの存在に注目する。その結果,2010年代は2000年代と比べて,夫の転勤時に妻も転居して専業主婦になる世帯が減り,夫が単身赴任になって妻が就業を継続する世帯が増えたことがわかる。また,推定結果から,同居と就業の選択には負の相関があり,未就学の子どものみをもつ妻は,夫とともに転居して就業しない確率が高いことを示す。これは転勤前の妻の就業形態や職業などをコントロールした上で得られた結果であり,夫の転勤前に就業していた妻に限定した分析でも同様の結果が確認される。夫の転勤について行って仕事を辞めるという選択は,幼い子どもがいる女性に多いことが示唆される。


2022年9月号(No.746) 特集●住むことと働くこと

2022年8月25日 掲載