総合職共働き世帯における転勤発生時の意思決定プロセスとその影響

要約

小山 はるか(法政大学大学院)

本稿は,近年増加する共働き世帯において,夫婦いずれかに転勤命令が発生した場合の,世帯内の調整と意思決定におけるプロセスと影響を調査分析し,認知的不協和や文化的差異の理論を踏まえ意思決定のメカニズムを解明するものである。分析の結果,まず,意思決定のタイミングとして「転勤命令に応じることの確定」と,「自身または配偶者の仕事継続と単身赴任,家族または子供帯同の確定」の2段階があることがわかった。最初の意思決定段階においては,男女を問わず,転勤命令が発生する以前より,過去の経験や個人が持つ価値観により形成された「転勤・転居に対する価値観・感情」を持っていた。また,その価値観・感情がポジティブかネガティブかに関わらず「転勤制度に対する違和感と抵抗感」が芽生えていた。しかし,「転勤は出世に影響する」という暗黙裡の認識が転勤に対する違和感と抵抗感を超越し,「転勤命令に応じることの確定」に至っていた。また,本研究では,個人の価値観・感情がネガティブであるにもかかわらず,転勤に応じる意思決定をするプロセスにおいて,解消されることのない不協和ループと,その背景に存在する相互協調的自己観による不協和生起が発生していることを明らかにした。


2021年特別号(No.727) 自由論題セッション

2021年1月25日 掲載