職場における性的マイノリティの処遇と課題

要約

名古 道功(かなざわ食マネジメント専門職大学教授,金沢大学名誉教授)

性的マイノリティは,就労するにあたってさまざまな「困難」を抱えている。最近の調査によってこれが明らかとなり,その対応策が求められている。性的マイノリティに関する施策を講じている企業は約10%と少ないが,大企業では43%と多い。先進的企業は多様な取組みを行っており,これは,性的マイノリティの就労環境改善のための企業施策のあり方を考えるにあたって参考になる。トランスジェンダーに関わる3つの地裁判決は,その特性・個別事情を重視するとともに,国内外の動向を踏まえた判断を下しており,注目される。また,パワハラを規制する改正労働施策総合推進法の指針において,性的マイノリティに対するハラスメントの2つの具体的事例(性的指向・性自認に関する侮辱的言動とアウティング)が明記された。使用者に一定の措置義務が課せられ,対応を求められる点で意義を有する。今後,性的マイノリティにとって就労しやすい職場環境を構築するには,伝統的な男女という性別規範にとらわれない施策や理解促進が求められるとともに,これまで以上に個人・個性を重視した企業実務が不可欠である。さらに,差別禁止を定める法律の制定が望まれる。


2021年10月号(No.735) 特集●ダイバーシティ推進と差別禁止法理の課題

2021年9月27日 掲載