職場のダイバーシティ推進とポジティブ・アクション─改善のための積極的措置をめぐる法的課題

要約

黒岩 容子(弁護士)

職場のダイバーシティを進めるうえで,差別の禁止と積極的な改善の実施とは車の両輪である。差別行為を規制するとともに,より積極的に,雇用制度に内在する差別構造を変革し,労働者の多様なアイデンティティを尊重し,その固有のニーズに配慮して,前向きに平等を実現していく必要がある。そこで重要な役割を果たす法的技法の一つがポジティブ・アクション(PA)である。他方で,PAに関しては,異別処遇を伴う優遇措置であって,平等原則に反しないか,数値上の結果が偏重され差別構造の変革が放置されないかなど,その正当性や有効性への疑問も提示されてきた。関連して,どのような状況について,どのような内容のPA措置が法的に許容され,また改善の有効性をもつのかも,PA実施上の大きな課題である。本稿では,PAの理論的正当性とその射程範囲を検討し,そのうえで,PAの許容範囲および措置内容,そして,その他の積極的な改善に向けての様々な措置全般の活用について,アメリカやEUでの議論も参考にしながら考察する。


2021年10月号(No.735) 特集●ダイバーシティ推進と差別禁止法理の課題

2021年9月27日 掲載