人事管理からみた中・高年期のキャリア支援─高齢社員の活用戦略と支援方針に着目して

要約

藤波 美帆(千葉経済大学准教授)

本稿の目的は,70歳までの雇用を見据え,高齢者の退職を軸におき,中・高年期の望ましいキャリア支援の基本方針を示すことにある。定年と退職年齢が乖離する場合,企業は人材活用戦略を定年前後で変化させ,高齢社員に適応を求める。高齢社員の活用戦略は,福祉的雇用,弱い活用,強い活用,統合の4つに分類でき,支援方針はこれに規定される。第1の「福祉的雇用」は,戦力として期待をせず支援もない。第2の「弱い活用」は,福祉的雇用よりやや活用の強度を強める。新たな役割を高齢社員と管理職に受容させるため,期待役割を伝え,希望や能力を把握し,労使での役割調整の仕組みを人事部内に整備する。事前準備を社員に促すためキャリア研修と定期的な面談機会を設ける。第3の「強い活用」は,期待する役割が現役社員に近づく。支援策は「弱い活用」時の拡充・改変を基本とする。定年後のキャリアは会社主導から自己責任へシフトし,準備期間となるキャリア研修の時期を早め,高齢期の活躍に向けた能力開発の投資量・内容を労使で時間をかけて話し合う。第4の「統合」は,現役社員と全く同じ活用戦略をとる。第一線での活躍期間が長くなるため,社員の能力開発行動を強化し,早期にキャリア研修と相談機会の場を設け高齢期の期待役割を伝え,能力開発のあり方を労使で決める。活用戦略は60代前半層とそれ以降では異なる可能性があり,60代前半層の先行的な進化が予想される。両者を想定し支援方針を策定する必要がある。


2021年9月号(No.734) 特集●高年齢者の活躍と雇用

2021年8月25日 掲載