正社員化を進めた60歳代前半層の人事管理の特質と課題─65歳定年制導入企業3社の事例分析をもとに

要約

田口 和雄(高千穗大学教授)

本稿の目的は,正社員化を進めた60歳代前半層の人事管理の特質について65歳定年制を導入した先進企業3社の事例分析をもとに考察することである。その結果,「60歳定年,65歳再雇用」の高齢者雇用の現状のもと,60歳未満正社員の人事管理を継続した個別施策が一部にとどまっていることを踏まえると,60歳代前半正社員の人事管理は,現行の高齢者雇用施策のもとで形成された活用施策といまの貢献度を反映させた処遇施策を継承しつつ,正社員化に拡充した分離型の人事管理であるといえる。しかし,同じ雇用形態(正社員)にもかかわらず年齢(60歳未満と60歳代前半層)によって分離型の人事管理をとるのは必ずしも合理的ではないと考えられ,新定年年齢(65歳)のもとで一貫した統合型の人事管理を構築することが求められる。とりわけ,活用施策と処遇施策の乖離問題に関わる賃金管理については,新定年年齢のもとで「貢献度=賃金」となるように賃金制度を設計することが必要となる。さらに,定年年齢の引上げによる正社員としての就労期間が延びることは,一般的になりつつある役職定年制のもとでの役職定年後の一般社員等としてのキャリアが長くなることに加え,これまでの「のぼる」キャリアから役職をピークに「さがる」キャリアに変化することを意味する。統合型人事管理の整備に向けて正社員のキャリアのあり方の再構築が求められる。


2021年9月号(No.734) 特集●高年齢者の活躍と雇用

2021年8月25日 掲載