高年齢者の雇用確保と企業側の調整

要約

梶谷 真也(京都産業大学准教授)

日本では,高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)によって,定年後の継続雇用といった高年齢者の雇用機会の確保や環境整備が進む。しかし,企業が高年齢者の雇用確保を進める代わりになんらかの形で調整を行っている可能性は高い。本論文では,高年齢者の雇用確保に伴う企業側の調整のうち,高年齢者の賃金や仕事内容,高年齢者と若年者との雇用の代替可能性に注目しながら,先行研究の知見を整理する。そして,企業調査のマイクロデータを用いて,これらの調整がどの程度行われているのかを確認する。その結果,60歳台前半の賃金は定年前と比べて減少するものの,継続雇用後の仕事内容や負担度の変更に応じて賃金が調整されていることが分かる。また,60歳以上従業員比率が高い企業ほど,「若年層が採用できない」ことを60歳台前半の雇用確保の課題として挙げており,企業として高年齢者と若年者の代替性を意識していることが示唆される。一方で,仕事内容が定年前と異なる場合においても,高年齢労働者の身体的状況を考慮しながら彼(女)らが持つ技能の継承を図ったり職場の人手不足を補うというかたちで高年齢労働者の配置が実施されていることが示される。ただし,仕事の負担量を調整しながらも定年前と同じ仕事を継続させることが,70歳までの就業機会確保につながっていることを指摘する。


2021年9月号(No.734) 特集●高年齢者の活躍と雇用

2021年8月25日 掲載