熟練技の特性と次世代への継承,育成における課題

要約

森 和夫(技術・技能教育研究所代表取締役)

熟練技はいつの時代にも存在し,次世代への継承は時代を越えて重要課題となっている。そこで,受け継ぐべき熟練技の本体は何か,その特性は何かを抽出し,次世代への継承を図るときの課題は何かを検討した。熟練者への面談,インタビュー結果から特徴を①仕事への考え方と成果,②行動様式,③作業概念によって整理した。熟練者が作業をするときに念頭に置くことは①高パフォーマンスの発揮,②実行プランの確立,③トラブル・事故の回避/安全の保持にあることである。作業概念は作業を行う上での重要な観点を示している。それらは「場(環境)の概念」「到達目標概念」「行為(運動)概念」「手段と時間の概念」で構成される。さらに労働形態による熟練技の相違点を考察した。具体的にはサービス労働とものづくり労働の熟練技の違い,生産方式による熟練技の違いを明らかにした。次に次世代への技術・技能継承の困難さを明らかにし,解決への考え方について次の7点で整理した。(1)技術・技能伝承の本質に立ち戻る(2)技術・技能伝承の見える化,能力管理でマネジメントする(3)技術・技能伝承は企業の固有技術・技能を明瞭化すること(4)技術・技能伝承とは技術・技能創造である(5)暗黙知を表現できない場合の克服の仕方(6)技術・技能伝承は指導者を越える後継者を育てること(7)最近の労働環境の変化と新たな課題の克服。

2020年11月号(No.724) 特集●スキルの継承・伝承

2020年10月23日 掲載