リカレント教育の経済への影響

要約

田中 茉莉子(武蔵野大学准教授)

近年、リカレント教育は、労働者の雇用・所得の増加、および人的資本の蓄積・経済成長の促進をもたらすものとして期待されている。このため、どのような内容のリカレント教育がどの程度労働者の生産性や経済成長に影響を与えるのかを分析することが重要となる。本研究では、労働者が受けてきた従来の学校教育とリカレント教育の内容との関係性に着目し、海外の事例や先行研究を参照しながら、リカレント教育が経済に与える影響について考察する。リカレント教育に対するニーズは、労働者が備えている知識・スキルに依存して、発展的な知識・スキルを修得するものと、基礎的な知識・スキルを修得するものがある。従来の学校教育とリカレント教育が補完的な場合、教育水準が高い労働者を対象とした発展的な知識・スキルを修得するリカレント教育が効果的となり、雇用、所得、人的資本、経済成長にプラスの影響をもたらす。一方、従来の学校教育とリカレント教育が代替的な場合、リカレント教育の効果は教育水準によって異なる。後者の場合、海外では、従来の学校教育の水準が初等・中等教育の段階にある労働者を対象としたリカレント教育が推進されてきた。しかし、海外と比べて平均的な教育水準が高い日本では、高等教育を既に受けた労働者を対象としたリカレント教育を促進することが労働者の雇用・所得の増加、および人的資本の蓄積・経済成長の促進に繫がると考えられる。

2020年8月号(No.721) 特集●学び直し

2020年7月27日 掲載