フランスにおける職業キャリア途上の職業訓練制度

要約

鈴木 俊晴(早稲田大学准教授)

フランスの職業キャリア途上における職業訓練制度は、近年大幅に制度変更された。現在は、勤続年数に応じて金銭という形で職業訓練の権利を付与するCPF(職業訓練個人口座)と、一定以上の勤続年数を有する労働者に職種の変更を可能とするような比較的長期の職業訓練の権利を付与するPTP(職業移行計画)がある。いずれの制度も、労働時間中に実施される場合には受講者に休暇が付与され、金銭的保障もなされる。フランスでは、職業訓練制度は労働者のみならず最終的には使用者にも利益をもたらすものであるとの考えが強く、企業の枠を超えた労使団体が運営の中心を担っている。その結果、職業訓練制度が「労使が協働して産業全体の利益のために行われるもの」というグランドデザインのもと構築されている。このことが、充実した制度を提供することにつながっている。もっとも、近年の技術革新をうけて、必要とされる技術や知識が目まぐるしく変化するなか、職業訓練のしくみにも変化がみられる。CPFは、以前の制度とは異なり、一定の年月が経過したり転職をした場合でも、それまで積み立てた職業訓練を受けられる権利が消失しないこととなった。一方、PTPは以前の制度よりも受講できる訓練の範囲が狭められ、職種の変更を可能とするような職業訓練のみが受講できる制度となった。職業訓練に対する労働者の自由度を高めつつも、適切な労働力移動に寄与しうるものに変更されている。

2020年8月号(No.721) 特集●学び直し

2020年7月27日 掲載