政策としての「リカレント教育」の意義と課題──「教育を受け直す権利」を足がかりとした制度設計にむけて

要約

佐々木 英和(宇都宮大学教授)

リカレント教育とは、組織的で体系的な教育機会を、人生の各時期に分散し配分することを基軸にした概念である。歴史的に見て、日本のリカレント教育政策は、十分に履行されないまま不発に終わってきたが、その根本原因は「やりにくく、わかりづらい」という原理的特質にある。本稿は、この特性を多角的に解明することを手がかりにして、リカレント教育の振興のための制度設計や法的整備につながりそうな展望を得ようとするものである。第一に、諸々の個人が教育期と労働期などを循環的に繰り返すことについては、その条件整備として、大学と産業界、文教行政と労働行政などといった各セクターどうしが領域横断的に連携を取ることの難しさを直視しなければならない。第二に、教育概念そのものの未整理状況がもたらす悪影響を見すえ、「教育」と「学習」、「教育されること」と「教育を受けること」との関係などを整理することにより、「子どもが大人から教育されること」であると決めつけられがちな従来の教育観について、「社会人や職業人が自ら主体的に教育を受けるかどうかを決めること」として理解し直す必要がある。第三に、「学び直し」概念について、「①学習し直し、②学習活動の行い直し、③教育の受け直し、④教わり直し」の四段階を意識して構造的に把握し直した上で、リカレント教育を施策化する筋道を探るべきなのである。

2020年8月号(No.721) 特集●学び直し

2020年7月27日 掲載