社会人の学び直し──オンライン教育の実態と課題

要約

向後 千春(早稲田大学教授)

人生百年時代を迎えてマルチステージを生きる前提にあって、ニーズとしての「社会人の学び直し」はますます大きくなっている。しかし、年収の増加というインセンティブがあるにもかかわらず社会人大学生と大学院生の数は伸びていない。その原因の1つは受け皿としての大学が「高い、忙しい、自分に合わない」と認知されていることによる。受け皿としての通信制大学、放送大学、オンライン大学、MOOC、BPプログラムの現状を検討してみると、社会人の学び直しへのニーズに対応していないことが明らかである。社会人の学び直しのために破壊的イノベーションであるオンライン教育の導入を進めていかなくてはならないことは疑いの余地がない。そこではオンライン教育を単なる対面授業の代替ではなく、ユニークで効果的な教育の手段として捉え直すマインドセットが教える方にも学ぶ方にも必要である。これまで常にマージナルなものとして扱われてきた通信教育はオンライン教育に装いを変えて教育の本流に合流するかどうかは不明である。しかし、大学を含めて企業が起こす新たなオンライン教育サービスは生涯教育へのニーズを吸収していくだろう。それは、どこの大学を卒業したかということではなく、実質的に何を学んで、その結果として獲得した知識とスキルと態度が評価される「人生百年時代」へとつながっていくだろう。

2020年8月号(No.721) 特集●学び直し

2020年7月27日 掲載