チームワークの効果と課題──組織の経済学の観点から

要約

石原 章史(東京大学准教授)

本稿では、組織におけるチームでの働き方の長所と短所について、組織の経済学の観点から概観する。伝統的な日本企業は従業員間の協働が機能し、製造業などで高い生産性を維持していた一方、日本企業のチームによる働き方を導入した米国の企業は必ずしも同様の生産性を達成することはできなかった。このように、チームによる働き方は潜在的に大きな便益が期待されるものの必ずしもうまく機能するとは限らず、チームによる働き方が機能する環境や条件を把握することはチームの導入を考えるうえで不可欠である。組織には潜在的に様々な非効率性が存在するが、本稿ではその中でも経済学で最も重要視されている要因の1つであるインセンティブ問題に焦点を当て、従業員の努力水準が観察できないモラルハザードの状況を考察する。最初に複数の従業員が存在する環境において、従業員を個別の業績で評価する独立評価と業績を集計しチームとして評価するグループ評価を比較し、モラルハザードの解消への影響を業績指標の統計的性質、調整、長期関係、監視、協働のインセンティブなどの観点から整理する。次に、従業員が集計された業績しか観察されないチームに属している時に努力供給が過少になる問題を指摘し、この問題点の根源や緩和方法を明らかにするためチームの規模、予算介入、チーム構成の在り方を議論する。

2020年7月号(No.720) 特集●チームワーク

2020年6月25日 掲載