小学校一年生の壁と日本の放課後保育

要約

高久 玲音(一橋大学准教授)

わが国では子どもが未就学児の時に共働きで就労しているにもかかわらず、子どもが小学校に入学すると労働市場から退出する母親も少なくない。その背景として指摘されるのが放課後保育の不足などを含めた通称「小学校一年生の壁」だ。本研究ではそうした「壁」が1995年から2010年の『国民生活基礎調査』で確認できるか検討した。分析手法は子どもの調査時点での月齢に着目した回帰不連続デザインを用いた。分析の結果、当該期間において、子どもの小学校入学とともに母親の就労率はおおむね10%低下していた。また、常勤雇用と短期間雇用の母親で顕著な就労率の低下がみられた。以上の結果は放課後保育の不足などの理由によって、小学校低学年の子どもを抱える母親において仕事と育児の両立が困難になっている可能性を示していた。学童保育の充実は質・量ともに相対的に安価であり、母親の就業の拡大のためにもこの年齢層への保育の拡充が不可欠だと考えられた。

2019年6月号(No.707) 特集●保育・育児と就業に関する実証エビデンス

2019年5月27日 掲載