(93)期間途中の解雇

11.非正規雇用

1 ポイント

(1)労契法17条1項は、期間の定めのある労働契約について、「やむを得ない事由」がある場合でなければ、その期間途中での解雇はできない旨規定するが、そこでの「やむを得ない事由」とは、客観的に合理的な理由及び社会通念上相当であるという事情に加え、当該雇用を終了させざるを得ない特段の事情と解するのが相当である。

(2)契約期間途中での解雇が認められる「やむを得ない事由」があるか否かの判断においては、解雇事由とされている労働者の問題行為の性質・態様のほか、それまでの労働者の勤務態度や使用者側の対応等の諸事情が勘案される。

2 モデル裁判例

学校法人東奥義塾事件 仙台高秋田支判平24.1.25 労判1046-22

(1)事件のあらまし

4年間の期間の定めのある労働契約により、学校法人Yの塾長(校長に相当)として雇用された労働者Xが、Xの行動に問題があることを理由として、当該契約期間の満了前(初年度の終了直前)に解雇されたため、本件解雇は労契法17条1項の「やむを得ない事由」が存在せず、解雇権を濫用したものであると主張し、労働契約上の地位確認等を求め提訴した。

第1審は、有期契約労働者の期間途中の解雇に必要な「やむを得ない事由」があるとまではいえないとして解雇無効と判断したため、Yが控訴した。

(2)判決の内容

労働者側勝訴

労契法17条1項は、「やむを得ない事由」がある場合でなければ、期間の定めのある労働契約について、契約期間が満了するまでの間において解雇ができない旨規定する。同条が、解雇一般につき、客観的に合理的な理由及び社会通念上の相当性がない場合には解雇を無効とするとする同法16条の文言をあえて使用していないことなどからすると、同法17条1項にいう「やむを得ない事由」とは、客観的に合理的な理由及び社会通念上相当である事情に加えて、当該雇用を終了させざるを得ない特段の事情と解するのが相当である。

本件において解雇理由とされたXの各行為を検討したところ、関係者への配慮を欠いた発言や思慮を欠くというべき行動を取っており、塾長としての見識が十分でない面があることは否定できないが、そのような行動についても極めて不適切とまではいえないこと、4年任期の初年度に塾長として一定の成果を出していたこと、Xの経歴からはYにおいてその経験不足の点を補完すべきであったところ、それを全うしたとは認められないことなどの諸事情を勘案すると、本件解雇には労契法17条1項にいう「やむを得ない事由」があったとは認められず、本件解雇は無効である。

3 解説

(1)労契法17条1項の意義

民法628条は、期間の定めのある雇用契約を締結した場合であっても、やむを得ない事由があるときは、労使ともに、直ちに契約の解除をすることができる旨規定している。この規定の反対解釈として、有期労働契約の場合には、労使ともにやむを得ない事由があるとき以外には、期間途中での解約はできないと解されてきた。

労契法17条1項は、使用者はやむを得ない事由がある場合でなければ、期間途中での解雇はできないと規定し、民法628条の期間途中の契約解除のうち、使用者からの解約(解雇)については、民法628条の反対解釈が妥当することを確認した。同条は強行規定であること、「やむを得ない事由」の立証責任は使用者にあることを明らかにした規定として重要な意義が認められる。

(2)期間途中の解雇を正当化する「やむを得ない事由」

労契法17条1項にいう「やむを得ない事由」に関して、モデル裁判例をはじめとする裁判例においては、期間の定めのない労働契約における解雇に必要とされる「客観的に合理的で、社会通念上相当と認められる理由」(同法16条)よりも厳格なものと解すべきであるとして、期間満了を待つことなく直ちに雇用を終了させざるを得ないような特別の重大な事由であることが求められている(大阪運輸振興(嘱託自動車運転手・解雇)事件 大阪地判平25.6.20 労判1085-87、X学園事件 さいたま地判平26.4.22 労経速2209-15等)。

「やむを得ない事由」として該当しうるのは、たとえば、労働者が就労不能となったこと、労働者に重大な非違行為があったこと、雇用の継続を困難とするような経営難などである(荒木尚志・菅野和夫・山川隆一『詳説労働契約法』155頁参照)。裁判例では、モデル裁判例のように「やむを得ない事由」の存在を容易には認めない傾向が窺える。たとえば、整理解雇の場合に求められる①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③手続きの妥当性といった観点からは、(解雇権濫用法理が類推適用される場合の)雇止めが肯定できると判断される状況であったとしても、3か月という短期の有期労働契約について、期間途中の解雇を容認するだけのやむを得ない事由は認められないとした安川電機八幡工場事件(福岡高決平14.9.18 労判840-52)や、いわゆる登録型の労働者派遣において、労働者派遣契約が期間途中で解除されたことを理由として、有期の派遣労働契約を締結している派遣労働者を期間途中で解雇したことにつき、派遣元の厳しい経営状況を考慮しても、なお無効であると判断したプレミアライン(仮処分)事件(宇都宮地裁栃木支判平21.4.28 労判982-5)等がある。

他方で、「やむを得ない事由」の存在を肯定したものとして、即戦力の証券アナリストとして期待され、雇用期間を1年間とする労働契約を締結した労働者に対する試用期間途中での解雇の有効性が争われたリーディング証券事件(東京地判平25.1.31 労経速2180-3)がある。この事件で、裁判所は、試用期間中であることから当該解雇は留保された解約権の行使であるとしつつ、有期労働契約であることから、その解約権の行使に際しては有期労働契約の解雇において要求されている労契法17条1項にいう「やむを得ない事由」に準じる特別の事由の存在を要すると判断した上で、当該労働者について、期待された能力には遠く及ばない状況であったこと、採用を決定する際に重要となる事実を秘匿したことは、試用期間途中での解雇を有効とするだけの特別重大な事由が存在しているといわざるを得ないとして、解雇を有効と判断した。