(39)【労働時間】休憩、休日

5.労働条件

1 ポイント

(1)休憩時間とは、労働からの解放が完全に保障されている時間であり、その自由利用の原則が労基法において定められている(労基法34条3項)。

(2)休憩時間中であっても、労働者は、企業施設管理及び規律保持の観点からの制約には服する必要がある。ただし、上記の制約に形式的には違反する行為であっても、実質的にみて企業における秩序を乱す恐れがない場合、またはその恐れが極めて少ない場合には、違反行為とはならない。したがって、この行為を理由とする懲戒処分は違法無効となる。

(3)労基法35条は、原則として週一日以上の休日を付与することを使用者に義務づけている(週休制の原則)。休日が特定されている場合、就業規則等の根拠に基づいて、あらかじめ他の日を特定して休日を振り替えることが可能である。このような場合、振替がなされた後で、労基法35条が定める最低基準が満たされていれば、労基法上の休日労働は発生しないので、三六協定の締結や割増賃金の支払いは必要ない。

2 モデル裁判例

電電公社目黒電報電話局事件 最三小判昭52.12.13 民集31-7-974

(1)事件のあらまし

原告側労働者Xは、被告側使用者Yに勤務する職員である。Xは、「ベトナム侵略反対、米軍立川基地拡張阻止」と書かれたプレートを着用して勤務したところ、これを取り外すよう上司から再三注意を受けた。Xはこの命令に抗議する目的で、「職場の皆さんへの訴え」と題したビラ数十枚を、休憩時間中に職場内の休憩室と食堂で配布した。Yの就業規則には、「職員が職場内で演説やビラ配布等を行う場合には事前に管理責任者の許可を受けなければならない」という内容の規定があり、YはXのビラ配布が就業規則に違反し、懲戒事由に該当するとして、Xを戒告処分に付した。Xは、休憩時間中のビラ配布を懲戒処分の対象とすることは、労基法34条3項の定める休憩時間自由利用の原則に違反する等と主張して提訴した。

(2)判決の内容

労働者側敗訴

従業員は休憩時間を自由に利用することができ、使用者はこれを妨げたり、休憩時間の自由利用として許される行為をとらえて懲戒処分をすることは許されない。しかし、休憩時間の自由な利用も、企業施設内で行われる場合には、使用者の企業施設に対する管理権の合理的な行使として認められる範囲で制約を受ける。

局所内において演説やビラ配布等を行うことは、休憩時間中であっても、局所内の施設の管理を妨げるおそれがあり、更に、他の職員の休憩時間の自由利用を妨げてその後の作業能率を低下させ、その内容いかんによっては企業の運営に支障をきたし企業秩序を乱すおそれがある。したがって、休憩時間中のビラ配布等を管理者の許可にかからせることは、合理的な制約である。

Xの行為は、形式的にみて事前許可制を定めた就業規則に違反するが、実質的にビラの配布が職場の秩序風紀を乱す恐れがないという特別な事情が認められるときは、就業規則の違反になるとは言えない。しかし、本件ビラ配布は、上司の適法な命令に抗議する目的で行われたものであり、ビラの内容も上司への抗議や局所内の政治活動をあおること等を含んでいた以上、休憩時間中に平穏に行われたとしても企業秩序を乱すおそれがある。

3 解説

(1)休憩時間に関する法規制

労基法は、労働時間が6時間を超える場合には45分以上、8時間を超える場合には1時間以上の休憩時間を労働者に与えるよう、使用者に義務づけている(34条1項)。

休憩時間は原則として当該事業場で働く労働者に一斉に与えなければならない。ただし、一定のサービス業については適用が除外されている(労基則31条)ほか、過半数代表との労使協定により例外を設けることが認められている(同条2項)。

また、労基法34条3項は休憩時間の自由利用の原則を定め、使用者が休憩時間中の労働者の行動に制約を加えることを禁じている。行政解釈は、休憩時間中の外出を許可制とすることは、事業場内において自由に休憩しうる場合には、必ずしも違法にならないとする(昭23.10.30 基発第1575号)が、学説の多数は原則として外出も自由であり、合理的理由がある場合に届出制や客観的基準に基づく許可制をとることのみが許されると主張している。

(2)自由利用の原則に対する制約の可否

労働者は、企業施設内で休憩する場合においては、使用者による施設管理や職場の規律保持のために必要な制約に服し、また他の労働者の休憩を妨げてはならない。

モデル裁判例では、職場内でのビラ配布を許可制とする就業規則の規定が休憩自由利用の原則に違反しないか否かが争われた。最高裁は、一般論として、このような規制が企業施設管理及び規律保持の観点から許されるとしている。この種の規制の具体例としては、ビラ配布・政治活動の許可制の他、保安等を目的とする一定区域への立入禁止、指定場所での喫煙などが挙げられよう。

なお、事業場内でのビラ配布や政治活動が形式的に就業規則に違反する場合であっても、実質的にみれば職場の秩序を乱す恐れがない、またはその恐れが極めて少ない「特別な事情」が認められる場合には、就業規則に違反しない。したがって、そのような行為を理由とする懲戒処分は違法無効とされる。モデル裁判例ではXのビラ配布につき「特別な事情」は認められないとされたが、昼食休憩時間中に食堂内で政党の選挙ビラを平穏に配布した行為をビラ配布の許可制に違反しないと判断した裁判例として、明治乳業事件(最三小判昭58.11.1 労判417-21)がある。

(3)休日に関する法規制

使用者は、毎週少なくとも週一回の休日を労働者に与えなければならない(労基法35条1項。週休制の原則)。就業規則において週休二日制がとられている場合、労基法上義務づけられている休日(法定休日)は二日のうち一日のみである。また、35条2項は、1項の例外として、四週間を通じ四日の休日を与える場合には労基法に違反しない旨を定めている。労基法上、休日となる日をあらかじめ特定することは必要とされていないが、行政指導においては、週休制の趣旨に鑑み、就業規則により休日をできるだけ特定させるという方針がとられている。

(4)休日の振替

休日が特定されている場合には、その休日に労働者を労働させ、他の日を休日とすること(休日の振替)ができるかという問題が生じる。この点については、「業務上必要のある場合には休日振替を行う」等の就業規則の定めに基づき、あらかじめ別の日を休日として特定する限り、使用者は労働者の個別同意を得なくても休日を振り替えることができると判断した裁判例(三菱重工業横浜造船所事件 横浜地判昭55.3.28 労判339-20)があり、行政解釈も同様の立場に立っている(昭23.4.19 基収1397号など)。

そして、振り替えた後の状態が労基法35条の定める最低基準(毎週一日、または四週間に四日の休日)を満たしている場合には、就業規則で休日とされている日は通常の労働日となり、労基法上の休日労働は発生しないから、三六協定の締結や割増賃金の支払いは不要である。

これに対して、あらかじめ振替休日を特定せず、就業規則上休日とされている日に労働させ、事後的に休日を与える場合には、就業規則上の休日は労働日に変更されない。したがって、労働者を休日に労働させることになり、その休日が労基法35条により付与を義務づけられる休日に該当する場合は労基法上の休日労働が発生するから、三六協定の締結・届出と割増賃金の支払いが必要となる。