○改正労働基準法の施行について

(昭和六三年一月一日)

(基発第一号、婦発第一号)

(都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長、労働省婦人局長通知)

労働基準法の一部を改正する法律(昭和六二年法律第九九号)については、昭和六二年九月二六日付け発基第七六号により、労働事務次官より通達されたところであるが、同法による改正後の労働基準法並びにこれに基づく労働基準法第三二条第一項の労働時間等に係る暫定措置に関する政令(昭和六二年政令第三九七号)及び労働基準法施行規則の一部を改正する省令(昭和六二年労働省令第三一号)による改正後の労働基準法施行規則の内容等は下記のとおりであるので、これらの施行に遺漏なきを期されたい。

1 法定労働時間

(1) 削除

(2) 一週間の法定労働時間と一日の法定労働時間

法第三二条第一項で一週間の法定労働時間を規定し、同条第二項で一日の法定労働時間を規定することとしたが、これは、労働時間の規制は一週間単位の規制を基本として一週間の労働時間を短縮し、一日の労働時間は一週間の労働時間を各日に割り振る場合の上限として考えるという考え方によるものであること。

一週間の法定労働時間と一日の法定労働時間とを項を分けて規定することとしたが、いずれも法定労働時間であることに変わりはなく、使用者は、労働者に、法定除外事由なく、一週間の法定労働時間及び一日の法定労働時間を超えて労働させてはならないものであること。

なお、一週間とは、就業規則その他に別段の定めがない限り、日曜日から土曜日までのいわゆる暦週をいうものであること。また、一日とは、午前〇時から午後一二時までのいわゆる暦日をいうものであり、継続勤務が二暦日にわたる場合には、たとえ暦日を異にする場合でも一勤務として取り扱い、当該勤務は始業時刻の属する日の労働として、当該日の「一日」の労働とするものであること。

(3)~(6) 削除

2 変形労働時間制

変形労働時間制は、労働基準法制定当時に比して第三次産業の占める比重の著しい増大等の社会経済情勢の変化に対応するとともに、労使が労働時間の短縮を自ら工夫しつつ進めていくことが容易となるような柔軟な枠組みを設けることにより、労働者の生活設計を損なわない範囲内において労働時間を弾力化し、週休二日制の普及、年間休日日数の増加、業務の繁閑に応じた労働時間の配分等を行うことによって労働時間を短縮することを目的とするものであること。

(1) 一箇月単位の変形労働時間制

イ 趣旨

現行の変形労働時間制は、変形期間が四週間以内とされているが、この最長期間について、通常の賃金計算期間である一か月としたものであり、今後週法定労働時間が四六時間、四四時間と段階的に短縮された場合に、四週五休制あるいは四週六休制を採用することにより対応しようとする場合にはこれによらなければならないものであること。

なお、変形期間の最長期間が一か月に延長されたほかは、改正前の変形労働時間制と要件等は変わらないものであること。

また、一箇月単位の変形労働時間制についても、一年単位の変形労働時間制において一日、一週間の労働時間の限度等が設けられたことの趣旨等にかんがみ、適切な運用がなされるよう十分指導すること。

ロ 労働時間の特定

一箇月単位の変形労働時間制を採用する場合には、就業規則その他これに準ずるもの(改正前の労働基準法第三二条第二項における「就業規則その他」と内容的に同じものである。以下同じ。)により、変形期間における各日、各週の労働時間を具体的に定めることを要し、変形期間を平均し週四〇時間の範囲内であっても使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更するような制度はこれに該当しないものであること。

なお、法第八九条第一項は就業規則で始業及び終業の時刻を定めることと規定しているので、就業規則においては、各日の労働時間の長さだけではなく、始業及び終業の時刻も定める必要があるものであること。

ハ 変形期間における法定労働時間の総枠

一箇月単位の変形労働時間制を採用する場合には、変形期間を平均し一週間の労働時間が法定労働時間を超えない定めをすることが要件とされているが、これは、要するに、変形期間における所定労働時間の合計を次の式によって計算される変形期間における法定労働時間の総枠の範囲内とすることが必要であるということであること。

40×変形期間の暦日数/7

ニ 時間外労働となる時間

一箇月単位の変形労働時間制を採用した場合に時間外労働となるのは、次の時間であること。

[1] 一日については、就業規則その他これに準ずるものにより八時間を超える時間を定めた日はその時間を、それ以外の日は八時間を超えて労働した時間

[2] 一週間については、就業規則その他これに準ずるものにより四〇時間を超える時間を定めた週はその時間を、それ以外の週は四〇時間を超えて労働した時間([1]で時間外労働となる時間を除く。)

[3] 変形期間については、変形期間における法定労働時間の総枠を超えて労働した時間([1]又は[2]で時間外労働となる時間を除く。)

ホ 就業規則の変更届の受理

一箇月単位の変形労働時間制を採用する場合又はその内容を変更する場合には、それに関連して就業規則を変更し、その変更届が労働基準監督署長に届け出られることとなるが、その受理に当たっては労働者代表の意見書をチェックし、必要に応じてその意見を十分聴くよう指導する等的確に指導すること。

なお、就業規則においては、変形期間の起算日を明らかにすることとされているので、的確に指導すること。

(2) フレックスタイム制

イ 趣旨

フレックスタイム制は、一か月以内の一定の期間の総労働時間を定めておき、労働者がその範囲内で各日の始業及び終業の時刻を選択して働くことにより、労働者がその生活と業務との調和を図りながら、効率的に働くことを可能とし、労働時間を短縮しようとするものであること。

従来は、労働基準法上、フレックスタイム制に関する規定はなく、事実上、始業及び終業の時刻が労働者の自主的決定にゆだねられている限り、法第三二条第二項及び第八九条第一項の趣旨に反しないものとして扱われていたものについて、今回その採用の要件を法律上明らかにしたものであること。

ロ 就業規則の定め

フレックスタイム制を採用する場合には、就業規則その他これに準ずるものにより、始業及び終業の時刻を労働者の決定にゆだねる旨を定める必要があるものであること。その場合、始業及び終業の時刻の両方を労働者の決定にゆだねる必要があり、始業時刻又は終業時刻の一方についてのみ労働者の決定にゆだねるのでは足りないものであること。

なお、法第八九条第一項は、就業規則で始業及び終業の時刻を定めることと規定しているが、フレックスタイム制を採用する場合には、就業規則において、始業及び終業の時刻を労働者の決定にゆだねる旨の定めをすれば同条の要件を満たすものであること。その場合、コアタイム(労働者が労働しなければならない時間帯)、フレキシブルタイム(労働者がその選択により労働することができる時間帯)も始業及び終業の時刻に関する事項であるので、それらを設ける場合には、就業規則においても規定すべきものであること。

なお、このことに関して、フレキシブルタイムが極端に短い場合、コアタイムの開始から終了までの時間と標準となる一日の労働時間がほぼ一致している場合等については、基本的には始業及び終業の時刻を労働者の決定にゆだねたこととはならず、フレックスタイム制の趣旨に合致しないものであること。

ハ 労使協定の協定事項

フレックスタイム制を採用する場合には、労使協定において、次に掲げる事項を定める必要があるものであること。

[1] 対象となる労働者の範囲

フレックスタイム制の対象となる労働者の範囲を特定するものであること。

[2] 清算期間

フレックスタイム制において、労働契約上労働者が労働すべき時間を定める期間を定めるものであり、その長さは、一か月以内の期間に限るものであること。

[3] 清算期間における総労働時間

フレックスタイム制において、労働契約上労働者が労働すべき時間を定めるものであり、この時間は、清算期間を平均し一週間の労働時間が法定労働時間の範囲内となるような定めをすることを要し、その計算方法は、一箇月単位の変形労働時間制の場合と原則として同様であること。

[4] 標準となる一日の労働時間

フレックスタイム制の下において、年次有給休暇を取得した際に支払われる賃金の算定基礎となる労働時間等となる労働時間の長さを定めるものであり、単に時間数を定めれば足りるものであること。

なお、フレックスタイム制の下で労働する労働者が年次有給休暇を取得した場合には、当該日に標準となる一日の労働時間労働したものとして取り扱うこととするものであること。

[5] 労働者が労働しなければならない時間帯を定める場合には、その時間帯の開始及び終了の時刻

コアタイムを設ける場合には、その時間帯の開始及び終了の時刻を定めなければならないものであること。

[6] 労働者がその選択により労働することができる時間帯に制限を設ける場合には、その時間帯の開始及び終了の時刻

フレキシブルタイムを設ける場合には、その時間帯の開始及び終了の時刻を定めなければならないものであること。

ニ 時間外労働となる時間

フレックスタイム制を採用した場合に時間外労働となるのは、清算期間における法定労働時間の総枠を超えた時間であること。したがって、法第三六条の規定による協定についても、一日について延長することができる時間を協定する必要はなく、清算期間を通算して時間外労働をすることができる時間を協定すれば足りるものであること。

例えば、法第六四条の二第一項の工業的業種における女子の一週間の時間外労働の上限については、清算期間における法定労働時間の総枠を超えた日を含む一週間以降の一週間ごとに適用になるものであって、たとえ、当該一週間のそれまでの労働時間がいくら短くとも当該一週間に清算期間における法定労働時間の総枠を超えて労働できる時間の上限は六時間であること。

ホ 労働時間の過不足の繰越

フレックスタイム制において、実際に労働した時間が清算期間における総労働時間として定められた時間に比べて過不足が生じた場合には、当該清算期間内で労働時間及び賃金を清算することがフレックスタイム制の本来の趣旨であると考えるが、それを次の清算期間に繰り越すことの可否については次によるものであること。

[1] 清算期間における実際の労働時間に過剰があった場合に、総労働時間として定められた時間分はその期間の賃金支払日に支払うが、それを超えて労働した時間分を次の清算期間中の総労働時間の一部に充当することは、その清算期間内における労働の対価の一部がその期間の賃金支払日に支払われないことになり、法第二四条に違反し、許されないものであること。

[2] 清算期間における実際の労働時間に不足があった場合に、総労働時間として定められた時間分の賃金はその期間の賃金支払日に支払うが、それに達しない時間分を、次の清算期間中の総労働時間に上積みして労働させることは、法定労働時間の総枠の範囲内である限り、その清算期間においては実際の労働時間に対する賃金よりも多く賃金を支払い、次の清算期間でその分の賃金の過払を清算するものと考えられ、法第二四条に違反するものではないこと。

ヘ 就業規則の変更届の受理

フレックスタイム制を採用する場合又はその内容を変更する場合には、それに関連して就業規則を変更し、その変更届が労働基準監督署長に届け出られることとなるが、その受理に当たっては労働者代表の意見書をチェックし、必要に応じてその意見を十分聴くよう指導する等的確に指導すること。

なお、フレックスタイム制を採用する場合には、就業規則その他これに準ずるもの又は労使協定において、清算期間の起算日を明らかにすることとされているので、的確に指導すること。

(3) 削除

(4) 一週間単位の非定型的変形労働時間制

イ 趣旨

日ごとの業務に著しい繁閑が生じることが多く、かつ、その繁閑が定型的に定まっていない場合に、一週間を単位として、一定の範囲内で、就業規則その他これに準ずるものによりあらかじめ特定することなく、一日の労働時間を一〇時間まで延長することを認めることにより、労働時間のより効率的な配分を可能とし、全体としての労働時間を短縮しようとするものであること。

ロ 対象事業場

一週間単位の非定型的変形労働時間制を採用することができる日ごとの業務に著しい繁閑の差が生ずることが多く、かつ、これを予測した上で就業規則その他これに準ずるものにより各日の労働時間を特定することが困難な事業としては、小売業、旅館、料理店及び飲食店の事業が定められており、かつ、常時使用する労働者の数が三〇人未満の事業場のみが当該制度を採用することができるものであること。

特に、小売業については、中央労働基準審議会からの答申において「制度の趣旨に則って適切な運用を図り、今後、その運用実態を把握し、必要に応じ、その範囲等について検討を行うこととすべきである」との公益委員の見解が示されていることを踏まえて、日ごとの業務に著しい繁閑が生じることが多いものに限って利用されるなど制度の趣旨に則って適切な運用がなされるよう十分指導すること。

ハ 削除

ニ 削除

ホ 一日の労働時間の上限

一週間単位の非定型的変形労働時間制において、事前通知により労働させることができる一日の所定労働時間の上限は、一〇時間であること。

ヘ 事前通知の方法

一週間単位の非定型的変形労働時間制を採用する場合には、一週間の各日の労働時間をあらかじめ労働者に通知する必要があるが、その方法は、少なくとも、当該一週間の開始する前に書面により行わなければならず、ただし、緊急でやむを得ない事由がある場合には、あらかじめ通知した労働時間を変更しようとする日の前日までに書面により労働者に通知することにより、当該あらかじめ通知した労働時間を変更することができるものであること。

なお、緊急でやむを得ない事由がある場合とは、使用者の主観的な必要性でなく、台風の接近、豪雨等の天候の急変等客観的事実により、当初想定した業務の繁閑に大幅な変更が生じた場合が該当するものであること。

ト 労使協定の届出

一週間単位の非定型的変形労働時間制に関する労使協定は、規則様式第五号により所轄労働基準監督署長に届け出なければならないものであること。

なお、労使協定の届出の受理に当たっては、一週間の所定労働時間等協定内容をチェックし、必要に応じて的確に指導すること。

チ 労働者の意思の尊重

使用者は、一週間単位の非定型的変形労働時間制の下で労働者を労働させる場合に、一週間の各日各人の労働時間を定めるに当たっては、事前に労働者の都合を聴く等労働者の意思を尊重するように努めなければならないものであり、その旨十分指導すること。

(5) 特別の配慮を要する者に対する配慮

使用者は、一箇月単位の変形労働時間制、一年単位の変形労働時間制、一週間単位の非定型的変形労働時間制の下で労働者を労働させる場合には、育児を行う者、老人等の介護を行う者、職業訓練又は教育を受ける者その他特別の配慮を要する者については、これらの者が育児等に必要な時間を確保できるような配慮をするように努めなければならないものであり、その旨十分指導すること。

その場合に、法第六七条の規定は、あくまでも最低基準を定めたものであって、法第六六条第一項の規定による請求をせずに変形労働時間制の下で労働し、一日の所定労働時間が八時間を超える場合には、具体的状況に応じ法定以上の育児時間を与えることが望ましいものであること。

3 労働時間の算定

(1) 事業場外労働に関するみなし労働時間制

イ 趣旨

事業場外で労働する場合で、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間の算定が困難な業務が増加していることに対応して、当該業務における労働時間の算定が適切に行われるように法制度を整備したものであること。

ロ 事業場外労働の範囲

事業場外労働に関するみなし労働時間制の対象となるのは、事業場外で業務に従事し、かつ、使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難な業務であること。したがって、次の場合のように、事業場外で業務に従事する場合であっても、使用者の具体的な指揮監督が及んでいる場合については、労働時間の算定が可能であるので、みなし労働時間制の適用はないものであること。

[1] 何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合

[2] 事業場外で業務に従事するが、無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合

[3] 事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けたのち、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後事業場にもどる場合

ハ 事業場外労働における労働時間の算定方法

(イ) 原則

労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなされ、労働時間の一部について事業場内で業務に従事した場合には、当該事業場内の労働時間を含めて、所定労働時間労働したものとみなされるものであること。

(ロ) 当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合

当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合には、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなされ、労働時間の一部について事業場内で業務に従事した場合には、当該事業場内の労働時間と事業場外で従事した業務の遂行に必要とされる時間とを加えた時間労働したものとみなされるものであること。なお、当該業務の遂行に通常必要とされる時間とは、通常の状態でその業務を遂行するために客観的に必要とされる時間であること。

(ハ) 労使協定が締結された場合

(ロ)の当該業務の遂行に通常必要とされる時間については、業務の実態が最もよくわかっている労使間で、その実態を踏まえて協議した上で決めることが適当であるので、労使協定で労働時間を定めた場合には、当該時間を、当該業務の遂行に通常必要とされる時間とすることとしたものであること。

また、当該業務の遂行に通常必要とされる時間は、一般的に、時とともに変化することが考えられるものであり、一定の期間ごとに協定内容を見直すことが適当であるので、当該協定には、有効期間の定めをすることとしたものであること。

なお、突発的に生ずるものは別として、常態として行われている事業場外労働であって労働時間の算定が困難な場合には、できる限り労使協定を結ぶよう十分指導すること。

ニ みなし労働時間制の適用範囲

みなし労働時間制に関する規定は、法第四章の労働時間に関する規定の範囲に係る労働時間の算定について適用されるものであり、第六章の年少者及び第六章の二の女子の労働時間に関する規定に係る労働時間の算定については適用されないものであること。

また、みなし労働時間制に関する規定が適用される場合であっても、休憩、深夜業、休日に関する規定の適用は排除されないものであること。

ホ 労使協定の届出

事業場外労働のみなし労働時間制に関する労使協定は、規則様式第一二号により所轄労働基準監督署長に届け出なければならないものであること。ただし、協定で定める時間が法定労働時間以下である場合には、届け出る必要がないものであること。

なお、事業場外労働のみなし労働時間制に関する労使協定の内容を規則様式第九号の二により法第三六条の規定による届出に付記して届け出ることもできるものであること。

労使協定の届出の受理に当たっては、協定内容をチェックし、必要に応じて的確に指導すること。

また、事業場外労働のみなし労働時間制に関する労使協定の締結に当たっては、事業場外労働のみなし労働時間制の対象労働者の意見を聴く機会が確保されることが望ましいことはいうまでもなく、その旨十分周知すること。

(2) 裁量労働に関するみなし労働時間制

イ・ロ 削除

ハ 裁量労働における労働時間の算定方法

労使協定において、裁量労働に該当する業務を定め、当該業務の遂行に必要とされる時間を定めた場合には、当該業務に従事した労働者は、当該協定で定める時間労働したものとみなされるものであること。

なお、当該業務の遂行に必要とされる時間は、一般的に、時とともに変化することが考えられるものであり、一定の期間ごとに協定内容を見直すことが適当であるので、当該協定には、有効期間の定めをすることとしたものであること。

ニ みなし労働時間制の適用範囲

みなし労働時間制に関する規定は、法第四章の労働時間に関する規定の範囲に係る労働時間の算定について適用されるものであり、第六章の年少者及び第六章の二の女子の労働時間に関する規定に係る労働時間の算定については適用されないものであること。

また、みなし労働時間制に関する規定が適用される場合であっても、休憩、深夜業、休日に関する規定の適用は排除されないものであること。

ホ 労使協定の届出

裁量労働のみなし労働時間制に関する労使協定は、規則様式第一三号により所轄労働基準監督署長に届け出なければならないものであること。なお、その受理に当たっては、協定内容をチェックし、必要に応じて的確に指導すること。

なお、裁量労働のみなし労働時間制に関する労使協定の締結に当たっては、裁量労働のみなし労働時間制の対象労働者の意見を聴く機会が確保されることが望ましいことはいうまでもなく、その旨十分周知すること。

4 年次有給休暇

(1) 年次有給休暇の付与日数の引上げ

年次有給休暇の最低付与日数の一〇日への引上げは平成六年四月一日以降の最初の基準日から、適用されるものであること。

(2) 所定労働日数が少ない労働者に対する年次有給休暇の比例付与

イ 趣旨

所定労働日数が通常の労働者と比べて少ない労働者に対しても、六箇月以上継続勤務し、全労働日の八割以上出勤した場合には、所定労働日数に応じた年次有給休暇を付与することが、通常の労働者との均衡上からも妥当であること、所定労働日数が少ない労働者についても、有給休暇がなければ連続した休みをとることができないこと等にかんがみ、所定労働日数が少ない労働者に対して、年次有給休暇の比例付与を行うこととしたものであること。

ロ 削除

(3) 年次有給休暇の労使協定による計画的付与

イ 趣旨

我が国における年次有給休暇の取得率が、完全取得が原則である欧米諸国と比べてきわめて低い水準にとどまっていることにかんがみ、年次有給休暇の取得率を向上させ、労働時間短縮を推進するためには、職場において、労働者が自己の業務を調整しながら、気がねなく年次有給休暇を取得できることとすることが有効であることから、労働者の個人的事由による取得のために一定の日数を留保しつつ、これを超える日数については、労使協定による計画的付与を認めることとしたものであること。

ロ 計画的付与の方法

年次有給休暇の労使協定による計画的付与は、労使協定により年次有給休暇を与える時期に関する定めをしたときは、法第三九条第四項の規定にかかわらず、その定めにより年次有給休暇を与えることができるものであること。

年次有給休暇の計画的付与の方式としては、[1]事業場全体の休業による一斉付与方式、[2]班別の交替制付与方式、[3]年次有給休暇付与計画表による個人別付与方式等が考えられるが、それぞれの場合に労使協定において定められるべき事項としては、次のものが考えられるものであること。

[1] 事業場全体の休業による一斉付与の場合には、具体的な年次有給休暇の付与日

[2] 班別の交替制付与の場合には、班別の具体的な年次有給休暇の付与日

[3] 年次有給休暇付与計画表による個人別付与の場合には、計画表を作成する時期、手続等

なお、特別の事情により年次有給休暇の付与日があらかじめ定められることが適当でない労働者については、年次有給休暇の計画的付与の労使協定を結ぶ際、計画的付与の対象から除外することも含め、十分労使関係者が考慮するよう指導すること。

ハ 計画的付与の対象日数

労使協定による計画的付与の対象となるのは、年次有給休暇の日数のうち、個人的事由による取得のために留保される五日を超える部分であること。

なお、年次有給休暇の日数が足りない、あるいはない労働者を含めて年次有給休暇を計画的に付与する場合には、付与日数を増やす等の措置が必要なものであること。

(4) 年次有給休暇の取得に伴う不利益取扱い

精皆勤手当及び賞与の額の算定等に際して、年次有給休暇を取得した日を欠勤として、又は欠勤に準じて取り扱うことその他労働基準法上労働者の権利として認められている年次有給休暇の取得を抑制するすべての不利益な取扱いはしないようにしなければならないものであること。

年次有給休暇の取得に伴う不利益取扱いについては、従来、[1]年休の取得を抑制する効果を持ち、法第三九条の精神に反するものであり、[2]精皆勤手当や賞与の減額等の程度によっては、公序良俗に反するものとして民事上無効と解される場合もあると考えられるという見地に立って、不利益な取扱いに対する是正指導を行ってきたところであるが、今後は、労働基準法上に明定されたことを受けて、上記趣旨を更に徹底させるよう指導を行うものとすること。

なお、昭和三〇年一一月三〇日付け基収第四七一八号及び昭和五三年六月二三日付け基発第三五五号のうち年次有給休暇の取得の不利益取扱いの是正に関する部分は廃止する。

5 削除

6 賃金・退職手当

(1) 賃金の支払

イ 賃金の預金又は貯金への振込みによる支払

(イ)賃金の預金又は貯金への振込みによる支払いについては、従来昭和五〇年二月二五日付け基発第一一二号をもって一定の要件を満たす限り、法第二四条に違反しないものと解されてきたところであるが、規則第七条の二第一項は、これを法令上明記したものであること。

(ロ) 同項における「同意」については、労働者の意思に基づくものである限り、その形式は問わないものであり、「指定」とは、労働者が賃金の振込み対象として銀行その他の金融機関に対する当該労働者本人名義の預貯金口座を指定するとの意味であって、この指定が行われれば同項の同意が特段の事情のない限り得られているものであること。

また、「振込み」とは、振り込まれた賃金の全額が所定の賃金支払日に払い出し得るように行われることを要するものであること。

(ハ) 同項の支払の方法による使用者に対しては、引き続き昭和五〇年二月二五日付け基発第一一二号により指導すること。

ロ 退職手当の支払方法

(イ) 法第二四条第一項ただし書において、命令で定める賃金について確実な支払の方法で命令で定めるものによる場合には通貨以外のもので支払うことができることを規定したが、規則第七条の二第二項は、これを受け退職手当の支払については、現金の保管、持ち運び等に伴う危険を回避すること等のため、労働者の同意がある場合には預金又は貯金への振込みによるほか、同項各号に掲げる方法によることができる旨を規定したものであること。

(ロ) 同項の「同意」については、労働者の意思に基づくものである限り、その形式は問わないものであること。

(ハ) 同項第一号及び第二号の「その他の金融機関」とは、小切手法ノ適用ニ付銀行ト同視スベキ人又ハ施設ヲ定ムルノ件(昭和八年勅令第三二九号)により小切手法(昭和八年法律第五七号)の適用につき銀行と同視されるものをいい、具体的には、郵便局、信用金庫、信用金庫連合会、信用協同組合、協同組合連合会、農業協同組合、農業協同組合連合会、漁業協同組合、漁業協同組合連合会、水産加工業協同組合、水産加工業協同組合連合会、農林中央金庫、商工組合中央金庫、労働金庫及び労働金庫連合会をいうものであること。

また、同項第三号の「郵便為替」には、普通為替、電信為替及び定額小為替があること。

(ニ)退職手当について小切手による支払を行おうとする使用者に対しては、労働者の同意に先立ち、小切手の支払人となっている金融機関名及び店舗名を明らかにした書面を当該労働者に交付するよう指導すること。

(2) 就業規則

イ 退職手当に関する事項の明記

(イ) 法第八九条第一項の改正は、退職手当の支払条件、方法等を労使間で明らかにするため、退職手当に関する就業規則の法定記載事項を明記したものであること。

(ロ) 同項第三号の二の退職手当の決定、計算及び支払の方法とは、例えば、勤続年数、退職事由等の退職手当額の決定のための要素、退職手当額の算定方法及び一時金で支払うのか年金で支払うのか等の支払の方法をいうものであること。

(ハ) 退職手当について不支給事由又は減額事由を設ける場合には、これは退職手当の決定及び計算の方法に関する事項に該当するので、就業規則に記載する必要があること。

ロ 退職手当に関する事項の別規則化

法第八九条第二項の改正は、退職手当に関する事項は詳細な事項になる場合が多いことにかんがみ、当該事項について別に規則を定めることができることとしたものであること。

ハ その他

(イ) 規則第五条の改正は、退職手当に関する就業規則の法定記載事項を明記したことに伴い、明示しなければならない労働条件として退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項を規定したものであること。

(ロ) 同条第二項の賃金については、改正後の同条第一項第三号の規定にあるとおり、退職手当及び改正後の同項第五号に規定する賃金が除外されており、したがって、書面によって明示すべき事項及び内容は昭和五一年九月二八日付け基発第六九〇号に示したとおりであること。

(3) 時効

イ 法第一一五条の改正は退職手当の保護を図るためその消滅時効期間を二年から五年に延長したものであること。

ロ 昭和六三年四月一日前に生じた退職手当の請求権の消滅時効期間は従前どおり二年であること。

7 その他

(1) 年少者の労働時間

イ 変形労働時間制に関する規定の適用除外

年少者については、年少者保護の見地から、改正前の四週間単位の変形労働時間制の規定は適用されないこととされていたが、同様の見地から、今回の改正により設けられた一箇月単位の変形労働時間制、フレックスタイム制、一年単位の変形労働時間制、一週間単位の非定型的変形労働時間制に関する規定は、年少者には適用されないこととしたものであること。

ロ 削除

ハ 法第六〇条は、法第三二条の構成要件を修正したものであるので、法第六〇条の要件を満たさない場合には法第三二条違反となるものであること。

(2) 妊産婦に対する変形労働時間制の適用についての制限

妊娠中の女子及び産後一年を経過しない女子(以下「妊産婦」という。)については、母性保護の見地から、使用者は妊産婦が請求した場合には当該妊産婦に時間外労働、休日労働又は深夜業をさせてはならないこととされているが、今回の改正により事業場において一箇月単位の変形労働時間制、一年単位の変形労働時間制又は一週間単位の非定型的変形労働時間制が採られることとなった場合におけるこれらの制度による一日又は一週間の法定労働時間を超える時間についても、現行の時間外労働に係る妊産婦の取扱いとの均衡にかんがみ、妊産婦が請求した場合には使用者は当該妊産婦を当該時間については労働させてはならないこととしたものであること。

(3) 地方公務員の特例

一般職の地方公務員(地方公営企業職員及び単純労務職員を除く。)については、国家公務員に準拠してフレックスタイム制、一年単位の変形労働時間制、一週間単位の非定型的変形労働時間制、事業場外労働及び裁量労働に関するみなし労働時間制、年次有給休暇の計画的付与の規定は適用しないこととしたものであること。

(4) 派遣労働者に対する労働基準法の適用に関する特例

派遣労働者については、これと労働契約関係にない派遣先事業主が業務遂行上の指揮命令を行うという特殊な労働関係にあるので、派遣労働者の保護に欠けることのないように労働者派遣法において労働基準法の適用に関する特例が設けられているところであるが、今回、労働時間に関する規定が改正されたので、これに伴い労働者派遣法について整備を行ったものであること。

特に、フレックスタイム制、一年単位の変形労働時間制の規定については、下記のとおり、その枠組みの設定に係る事項は、派遣元の使用者が行うものであること。

イ フレックスタイム制

派遣労働者を派遣先においてフレックスタイム制の下で労働させる場合には、派遣元の使用者は、次のことを行う必要があるものであること。

[1] 派遣先事業場の就業規則その他これに準ずるものにより、始業及び終業の時刻を派遣労働者の決定にゆだねることを定めること。

[2] 派遣元事業場において労使協定を締結し、所要の事項について協定すること。

[3] 労働者派遣契約において当該労働者をフレックスタイム制の下で労働させることを定めること。

ロ 一年単位の変形労働時間制

派遣労働者を派遣先において一年単位の変形労働時間制の下で労働させる場合には、派遣元の使用者は、派遣元事業場において労使協定を締結し、[1]一年以内の一定の期間を平均し一週間の労働時間が四〇時間を超えない範囲内において、[2]労働日及び労働日ごとの労働時間を具体的に定める必要があること。

(5) 労使協定の締結

イ 労使協定の効力

労働基準法上の労使協定の効力は、その協定に定めるところによって労働させても労働基準法に違反しないという免罰効果をもつものであり、労働者の民事上の義務は、当該協定から直接生じるものではなく、労働協約、就業規則等の根拠が必要なものであること。

ロ 労使協定の締結の適正手続

労働者の過半数で組織する労働組合がない事業場における過半数代表者の選任については、次の要件に該当するものであること。

[1] 過半数代表者の適格性としては、事業場全体の労働時間等の労働条件の計画・管理に関する権限を有するものなど管理監督者ではないこと

[2] 過半数代表者の選出方法として、(a)その者が労働者の過半数を代表して労使協定を締結することの適否について判断する機会が当該事業場の労働者に与えられており、すなわち、使用者の指名などその意向に沿って選出するようなものであってはならず、かつ、(b)当該事業場の過半数の労働者がその者を支持していると認められる民主的な手続が採られていること、すなわち、労働者の投票、挙手等の方法により選出されること

(6) なお、今回の労働基準法の改正に伴い、就業規則の改正が行われることとなると考えられるが、それに併せ、一〇人未満の事業場も含め、小規模事業場における就業規則の一層の整備を図るよう指導すること。