Q6 企業は従業員の個人情報についてどのような配慮をすべきでしょうか。

質問

職場における従業員の個人情報の保護に関して、企業としては具体的にどのような配慮をなすべきでしょうか。指針等も含めて、教えて下さい。

回答

ポイント

使用者は、職場における労働者の個人情報を保護するように配慮することを求められています。行政により詳細な行動指針が発表されていますので、こうした指針などもふまえた対応が求められるといえるでしょう。

解説

〈個人情報の保護のための行動指針〉

使用者は、職場における労働者のプライバシーに配慮することを求められています。プライバシーとは、個人の私的領域につき他人から干渉を受けない権利を言いますが、労働者の個人情報は、プライバシーの中でも代表的なものであり、使用者が労働者の個人情報をみだりに開示した場合などは、損害賠償責任が発生することがあります。

こうした私法上の規律に加え、行政においても、労働者の個人情報を保護するための取り組みがなされています。

最も包括的なものとしては、厚生労働省(当時労働省)により発表された「新しいウィンドウが開きます労働者の個人情報に関する行動指針」(平成12年12月20日)があります。この指針は、まず、個人情報の処理は労働者の雇用に直接関連する範囲内において適法かつ公正に行われるべきこと、業務上知り得た個人情報をみだりに第三者に知らせ、または不当な目的に使用してはならないことなどの基本原則を明らかにしています。そのうえで、 (1)情報の収集に関しては、本人からの直接収集を原則とすること、人種、民族、社会的身分、本籍、出生地等の社会的差別の原因となる事項や思想・信条及び信仰についての個人情報を収集してはならないこと、うそ発見器等を用いた検査やHIV検査、および遺伝子検査を行ってはならないことなどが定められています。 (2)収集した個人情報の保管については、収集の目的の範囲内で保管すること、不要となったものは破棄または削除することなどが定められ、 (3)情報の利用・提供については、収集の目的の範囲内で行うことの他に、目的外に利用する場合には労働者の事前の同意を得ることなどが定められています。さらに、 (4)情報処理を委託する場合には適切な委託先を選定すること、委託契約において適正な処理のための制約を付することなども掲げられています。以上の他に、 (5)労働者は原則として自己の個人情報につき開示を求めることができ、誤りがあった場合には訂正を求めることができることなども定められています。

さらに、厚生労働省は、新しいウィンドウが開きます個人情報保護法の施行を受けて、「新しいウィンドウが開きます雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針」を定めています(平16.7.1厚労告259号)。この指針では、収集する従業員の個人情報の利用目的を具体的に特定すべきことや、個人データ管理者を事業所ごとに設置すべきこと、及び個人データの処理を外部に委託する場合の注意事項(利用目的達成後の破棄・削除の確保)などについて定められています。

〈健康診断・募集採用等における個人情報の保護〉

個人情報の中でも、労働者の健康情報の取扱いは特に重要な問題となります。この点に関し、新しいウィンドウが開きます労働安全衛生法上、事業者は労働者に対し、一定の事項に関して医師による健康診断を行う義務を負うとともに(新しいウィンドウが開きます同66条)、異常の所見があると診断された労働者については、医師の意見を聞いた上で適切な措置を講ずる義務を負っています(新しいウィンドウが開きます同66条の4、5)。こうした健康診断を通じて得られた労働者の健康に関する情報についても、就業に関する措置を実施する上で関係者に提供する情報は必要最小限のものに留めるなど、プライバシーの保護に配慮することが必要です(「新しいウィンドウが開きます健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針PDF」平成8.10.1健康診断結果措置指針公示第1号、改正 平成20.1.31基発0131001号)などを参照してください)。

以上の他、募集・採用等の段階での個人情報の保護に関しては、新しいウィンドウが開きます職業安定法により、ハローワーク(公共職業安定所)、職業紹介事業者、労働者の募集を行う者等は、労働者の個人情報を業務の目的の達成に必要な限度で収集し、また、収集の目的の範囲内でこれを保管・使用すること、個人情報の管理のために適正な措置を講ずることを義務づけられており(新しいウィンドウが開きます職安法5条の4)、指針においてより具体的な措置が定められています(新しいウィンドウが開きます平11.11.17 労告141号新しいウィンドウが開きます改正平成16.11.4 厚労告391号など)。また、労働者派遣法にも同様の規定や指針があります(新しいウィンドウが開きます労働者派遣法24条の3新しいウィンドウが開きます派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針PDF(平11.11.17 労告137号、改正、平成21.3.31厚労告244号)など)。こうした個人情報の適正な管理に必要な措置が講じられていることは、有料職業紹介事業や一般労働者派遣事業についての許可基準の一つとなっています(新しいウィンドウが開きます職安法31条2号新しいウィンドウが開きます労働者派遣法7条3号)。

関係法令・資料

労働者の個人情報に関する行動指針(平成12年12月20日 なお厚生労働省は当時労働省)(厚生労働省Webサイト)

雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針(平成16年07月01日 厚生労働省告示259号)

個人情報の保護に関する法律(平成15年05月30日 法律第57号)

労働安全衛生法(昭和47年06月08日 法律第57号)第66条

職業安定法(昭和22年11月30日 法律第141号 )第5条の4 31条の2

健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針PDF(平成08年10月01日公示)(埼玉労働局Webサイト)

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(労働者派遣法)(昭和60年07月05日 法律第88号) 第7条3号 24条の3

派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針PDF(平成11年11月17日 労働省告示第137号、最終改正平成21年厚生労働省告示第244号)(厚生労働省Webサイト)

職業紹介事業者、労働者の募集を行う者、募集受託者、労働者供給事業者等が均等待遇、労働条件等の明示、求職者等の個人情報の取扱い、職業紹介事業者の責務、募集内容の的確な表示等に関して適切に対処するための指針(平成11年労働省告示第141号) (厚生労働省Webサイト)

職業紹介事業者、労働者の募集を行う者、募集受託者、労働者供給事業者等が均等な待遇、労働条件等の明示、求職者等の個人情報の取り扱い、職業紹介事業者の責務、募集内容の的確な表示等に関して適切に対処するための指針の一部を改正する告示(平成16年厚生労働省告示第391号)

(成蹊大学法学部准教授 原 昌登)

2011年3月掲載