Q6.セクシュアルハラスメントに関する法律の規制はどのようになっていますか。また、セクシュアルハラスメントを受けた場合、会社に対して損害賠償を請求できますか。

ご利用にあたって

  • 労働問題Q&Aは個別事案について法的なアドバイスをするものではありません。
  • 本文の内容は各執筆者個人の責任によるもので、機構としての見解を示すものではありません。

具体的なご相談は、厚生労働省「総合労働相談コーナー」新しいウィンドウなど行政機関等の相談窓口にお尋ねください。


質問

職場で上司から卑猥な言葉をかけられたり、性的関係を求められたりして、困っています。これはセクシュアルハラスメントに当たると思うのですが、均等法ではセクシュアルハラスメントについて具体的にどのような規制をしているのでしょうか。また、上司や会社に対して損害賠償を請求できますか。

回答本文の内容は執筆時点のものです。その後の法改正などは反映しておりません。

ポイント

  1. 新しいウィンドウが開きます均等法は、職場におけるセクシュアルハラスメントの発生を防止するために、事業主が雇用管理上必要な措置を取るよう義務付けています。事業主が必要な措置を講じず、是正指導にも応じない場合は、企業名公表の対象となります。
  2. 労働者と事業主との間に職場でのセクシュアルハラスメントに関する紛争が生じた場合、均等法に基づく紛争解決の援助などを利用することができます。また、被害を受けた労働者は、訴訟により、行為者や企業に対して損害賠償を請求することもできます。

解説

セクシュアルハラスメント(いわゆるセクハラ)は、一般に、「相手方の意に反する性的言動」と定義されます。新しいウィンドウが開きます「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(以下「均等法」という)新しいウィンドウが開きます11条は、事業主が、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受けたり、または当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されたりすることのないよう、雇用管理上必要な措置を講じなければならないと定めています。平成18年の均等法改正により、この規定は、女性労働者が被害者となる場合のみでなく、男女労働者双方を対象とするように改められました。また、事業主の義務についても、職場環境に配慮するだけでなく、積極的かつ具体的な対応を取ることが求められるようになりました。

均等法11条に基づき事業主が講じるべき措置に関しては、厚生労働大臣が具体的な指針を定めています(新しいウィンドウが開きます「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」平成18年厚生労働省告示第615号)。指針によれば、均等法11条にいう「性的な言動」とは、性的な内容の発言(性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布すること等)および性的な行動(性的な関係を強要すること、必要なく体に触ること、わいせつな図画を配布すること等)を指します。また、職場におけるセクシュアルハラスメントは「対価型セクシュアルハラスメント」と「環境型セクシュアルハラスメント」の二つに分類されます。対価型セクシュアルハラスメントとは、職場において行われる労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により、当該労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受けることです。環境型セクシュアルハラスメントは、職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等、当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることをいいます。

質問の事例のように、上司による性的な内容の発言や行動によって労働者の就業環境が不快なものとなり、仕事に支障が生じている場合は、環境型セクシュアルハラスメントに該当します。もし、労働者が上司に対して抗議をしたり、性的関係の要求を拒否したりしたために、降格や減給などの不利益を被った場合には、対価型セクシュアルハラスメントにも該当することとなるでしょう。

指針では、事業主が職場におけるこのようなセクシュアルハラスメントを防止するために講じなければならない措置として、 (1)事業主の方針の明確化およびその周知・啓発、 (2)相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、 (3)職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応(事実関係の迅速かつ正確な確認、行為者および被害者に対する適正な措置、再発防止に向けた措置)、 (4) (1)~ (3)の措置にあわせて講じるべき措置(相談者・行為者等のプライバシーの保護、相談や事実確認への協力を理由とする不利益取り扱いの禁止の周知・啓発)を定めています。

事業主がこれらの措置を講じない場合、厚生労働大臣による行政指導が行われます(新しいウィンドウが開きます均等法29条)。事業主が是正勧告にも応じない場合には、企業名の公表の対象となります(新しいウィンドウが開きます均等法30条)。また、労働者と事業主との間で職場でのセクシュアルハラスメントに関する紛争が生じた場合には、均等法に基づく都道府県労働局長による紛争解決の援助(新しいウィンドウが開きます均等法17条)および紛争調整委員会による調停(新しいウィンドウが開きます均等法18条)を受けることができます(→新しいウィンドウが開きます13‐Q4参照)。都道府県労働局の雇用均等室では、職場におけるセクシュアルハラスメントに関する労働者からの相談に、秘密厳守・無料で対応しています。

セクシュアルハラスメントを受けた労働者は、被害を回復するために、セクシュアルハラスメントの行為者やその雇い主である企業に対して損害賠償を請求することも可能です。裁判例では、セクシュアルハラスメントが被害者の人格権ないし人格的利益を侵害したと認められる場合には、行為者の不法行為(民法709条)に基づく損害賠償責任を認めています。また、行為者の雇い主である企業についても、使用者責任(民法715条)や職場環境配慮義務違反(民法415条、債務不履行)に基づいて、損害賠償責任が認められることになります。

(名古屋大学准教授 中野 妙子)

2010年9月掲載