Q21 教育訓練に関する法律問題について教えて下さい。

ご利用にあたって

  • 労働問題Q&Aは個別事案について法的なアドバイスをするものではありません。
  • 本文の内容は各執筆者個人の責任によるもので、機構としての見解を示すものではありません。

具体的なご相談は、厚生労働省「総合労働相談コーナー」新しいウィンドウなど行政機関等の相談窓口にお尋ねください。


質問

企業が従業員に教育訓練を実施する場合、法的に問題となりうるのはどのような点でしょうか。教えて下さい。

回答本文の内容は執筆時点のものです。その後の法改正などは反映しておりません。

ポイント

企業は、労働契約に基づき、基本的に従業員に対し教育訓練を受けることを命じることができると解されます。ただし、業務と全く関係のない教育訓練については認められませんし、実施に際し法律上禁止される差別を行うことも許されません。

解説

企業が従業員に対して行う教育訓練には、業務の遂行の過程内におけるOJT(On the Job Training)と過程外におけるOff-JT(Off-the Job Training)に大きく分けることができます。OJTは、仕事の中で教育訓練をしていくものですから、企業が従業員に対し仕事をするよう命令する権利、すなわち労働契約に基づく指揮命令権を根拠として行われます。これに対し、Off-JTは、座学等による教育訓練も含まれますので、法的には労働契約に基づく企業の業務命令権(指揮命令権よりも広い、業務全般に関する命令を行う権利)が根拠になると解されます。また、職業訓練は就業規則の相対的必要記載事項とされているため(新しいウィンドウが開きます労働基準法89条7号)、制度として教育訓練を行う場合には、就業規則で規定する必要があります。以上をまとめると、企業は、(就業規則の規定や個別の合意など)労働契約に基づき、従業員に教育訓練を受けるよう命じる権利があるということになります。

ただし、教育訓練が業務遂行と全く関係のない内容の場合、方法が妥当でない場合、内容等が法令に違反する場合などは、業務命令権の濫用、あるいはそもそも業務命令の範囲に含まれ得ないとして、教育訓練の命令が法的に認められない(違法である)と解釈されることがありえます(教育訓練として就業規則の書き写しを命じたことが正当な業務命令の範囲を逸脱する違法なものと判断された例に、最二小判平成8.2.23 JR東日本(本荘保線区)事件 労判690号12頁があります)。

また、教育訓練に関し、法律上禁止される差別を行うことも許されません。例として、思想・信条に基づくもの(新しいウィンドウが開きます労基法3条)、性別を理由とするもの(新しいウィンドウが開きます男女雇用機会均等法6条)、組合活動を理由とするもの(新しいウィンドウが開きます労働組合法7条)などがあります。特に性別について問題となることが多いと思われますが、教育訓練に関し、対象から男女いずれかを排除すること、実施条件を男女で異なるものとすること、内容や期間を男女で異なるものとすることは、いわゆるポジティブ・アクションとして認められる場合などを除き、原則として違法とされます(詳細は新しいウィンドウが開きます「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」平成18.10.11厚労告614号の第2の6も参照してください)。この他、新しいウィンドウが開きますパートタイム労働法では、パートタイム従業員の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度が正規従業員と同一である場合、その業務の遂行に必要な知識、技術に関する(正規従業員対象の)研修を、該当するパート従業員に対しても実施することを原則として義務づけています(新しいウィンドウが開きますパートタイム労働法10条。なお、要件を満たすパート従業員のみが対象で、パート社員全般に関する法規制ではありません)。

関係法令・資料

労働基準法(昭和22年04月07日 法律第49号)第3条

労働組合法(昭和24年06月01日 法律第174号)第7条

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法) (昭和47年07月01日 法律第113号)第6条

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パート労働法)(平成05年06月18日 法律第76号)第10条

労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針 (平成18年10月11日 厚労省告示第614号)

(成蹊大学法学部准教授 原 昌登)

2011年4月掲載