Q17 休職制度の法的な問題点はどのようなものですか。

ご利用にあたって

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質問

私の勤務先には、傷病休職、起訴休職、自己都合休職、組合専従休職など様々な休職制度があります。これらにはどのような法的問題点があるのでしょうか。また、治療に長時間を要する病気にかかって傷病休職中の同僚がいますが、病気から回復した場合には必ず復帰できるのでしょうか。

回答本文の内容は執筆時点のものです。その後の法改正などは反映しておりません。

ポイント

  1. 休職制度とは、就業規則などの根拠に基づき、労働契約を存続させつつ労働義務を一時消滅させる制度ですが、その性格に応じた解釈適用が必要になります。
  2. 傷病休職の期間が満了した労働者が職場復帰するためには、原則として以前の職務を行いうる状態に回復していることが必要ですが、使用者に一定の配慮が求められることがあります。

解説

〈休職制度の意義〉

一般に休職とは、労働者を就労させることが適切でない場合に、労働契約を存続させつつ労働義務を一時消滅させることをいいます。その内容は様々で、業務外の病気や負傷を理由とする傷病休職、その他の私的な事故を理由とする事故欠勤休職、起訴された従業員につき、社会的信用や企業秩序の維持、あるいは懲戒処分が決定されるまでの待機を目的として行う起訴休職、他社への出向にともなう自社での不就労に対応する出向休職、留学や公職への就任に伴う自己都合休職、労働組合の役員に専念する場合の専従休職などがあります。

休職は、就業規則や労働協約などに基づき、使用者が一方的意思表示により発令するのが通常ですが、労働者と使用者の個別の合意にもとづき実施されることもあります。休職中に賃金が支払われるかどうか、また、休職期間が勤続年数に算入されるかどうかは、休職のタイプや個々の企業の取扱いによって異なります(出向休職のような会社都合の休職の場合、休職期間は勤続年数に通算されることが通常でしょう)。休職期間中は無給とされる場合は、当該休職措置が無効と判断されれば、賃金を請求することができます。

〈休職の要件〉

どのような場合に休職を命ずることができるかは、基本的には就業規則などの定めによりますが、期間満了時に休職事由が消滅しない場合に自動退職の効果が発生するときには、その場合に退職となることを正当化しうる事情(休職相当性)が要件となると考えられます。また、起訴休職については、上に述べた制度の趣旨から、労働者の起訴により使用者の社会的信用が毀損され、あるいは起訴に伴う勾留などにより労務提供が困難になるおそれがあることや、あるいは懲戒処分の可否を決定するまでの間就労させることが適切でないことが要件となります。さらに、解雇猶予としての性格をもつ傷病休職や事故欠勤休職の場合は、解雇をなすには30日の予告期間が要求されている(新しいウィンドウが開きます労働基準法20条)こととのバランスから、休職期間は30日以上とすることが必要となると思われます。

〈休職の終了〉

休職期間中に休職事由が消滅すれば、休職は終了します。また、休職期間が満了した場合の扱いとしては、労働者が職場に復帰するものと、期間満了の時点で休職理由が消滅していないときには解雇がなされ、あるいは労働契約の自動終了(自動退職)という効果が発生するものとがあります。傷病休職や事故欠勤休職では後者の扱いがなされることが多くありますが、その場合、休職は、出勤できない労働者に対して一定期間解雇を猶予する機能を果たすことになります。

また、傷病休職などで期間満了により自動退職の効果が生ずる場合、期間満了時に傷病から回復(すなわち治癒)していれば、使用者の復職の意思表示がなくとも、労働契約の終了という効果は発生しないと解されます。ここで、治癒したといえるためには、従前の職務を支障なく行いうる状態に復帰したことが原則として必要となります。ただし、休職期間終了時にそうした状態に達していない場合でも、相当期間内に治癒することが見込まれ、かつ当人に適切なより軽い業務が現に存在する場合などには、使用者は労働者を治癒までの間その業務に配置すべき信義則上(新しいウィンドウが開きます労働契約法3条4項)の義務を負い、自働退職の効果は生じない(復職を拒めない)と考えられます(新しいウィンドウが開きます東京地判昭和59.1.27 エール・フランス事件 判時1106・147、大阪地判平11.10.4 東海旅客鉄道事件 労判771号25頁など)。特に最近、メンタル面の不調を理由とした休職の例が増えているように思われますが、身体的な怪我や疾病の場合に比べ、メンタル面の不調の場合は、治癒したか否かが使用者にとって(あるいは労働者自身にとっても)わかりにくい、判断が難しいという特徴があります。治癒の有無は、基本的には使用者が就業規則の規定など休職制度の趣旨に沿って判断、決定することになると思われますが、後々の紛争を避けるという意味でも、治癒したか否か(復職を認めるか否か)の判断には慎重な対応が求められるといえるでしょう(メンタル面の不調を理由とする休職については、企業内だけで判断するよりも、精神科医など専門家と連携して対応することがより望ましい場合も多いといえるでしょう)。

関係法令・資料

労働基準法(昭和22年04月07日 法律第49号)第20条

労働契約法(平成19年12月05日 法律第128号)第4条

(成蹊大学法学部准教授 原 昌登)

2011年4月掲載