Q14 人事考課(査定)について法律上留意する点は何ですか。

ご利用にあたって

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質問

人事考課と査定は、経営に深く関わる事柄でもありますし、企業が自由に行ってよいように思いますが、何か法律上留意する点はありますか? 例えば人事考課が法的に違法とされるようなことはあるのでしょうか?

回答本文の内容は執筆時点のものです。その後の法改正などは反映しておりません。

ポイント

人事考課(査定)とは企業が行う従業員に対する評価であり、職能資格制度や賞与額の決定などで大きな役割を担っています。人事考課を行うにあたっては原則として企業に広い裁量が認められますが、人事考課が違法な差別に基づき行われた場合などは例外的に違法と評価されることがあります。

解説

〈人事考課とは〉

人事考課とは、一言でいえば企業が従業員に対し企業が行う評価のことを指します(人事考課は法律上の定義があるわけではありませんので、用いられる文脈によって多少意味内容が異なることがあります。以下では一般的な内容に絞って説明します)。従業員の職務遂行能力・仕事に対する姿勢や勤務態度・勤務成績(業績)の3つの評価要素が重視されることが多く、企業ごとに細かく作成された評価項目に沿って評価が行われることが多いでしょう。実際の評価は、直近の上司(例えば課長)が従業員を観察して一次評価を行い、さらに上位の上司(部門の長)が二時評価を行い、役員等によって部門間の調整が行われるといったプロセスを経るのが一般的です。人事考課と査定は、ほぼ同義で使われる例もありますが、評価の結果を人事考課と呼び、評価をつける際に行われる作業を指して査定と呼ぶ例も見られます。

人事考課は、人事全般、特に職能資格制度における資格や職位を決定する判断材料として大きな役割を持っています。この他にも、定期昇給やベースアップ、一時金(賞与)の額の決定といった様々な場面で重要な役割を担っています。

〈人事考課に関する法律問題〉

人事考課(査定)は、就業規則による制度化を通して労働契約の内容になっているのが一般的といえるでしょう(新しいウィンドウが開きます労働契約法7条。なお、企業と従業員の合意を通して労働契約の内容となることもあります)。この場合、使用者は、労働契約上、人事考課権(査定権)を従業員に対しもつことになります。この権限は人事権の一類型であるといえるでしょう。人事考課は、企業の経営と強く関連していることもあり、原則として使用者に広い裁量権があると解されています。例外的に、 (1)人事考課が法律上禁止された差別に該当するような形で行われた場合(例えば国籍や社会的身分(新しいウィンドウが開きます労働基準法3条)、組合活動(新しいウィンドウが開きます労働組合法7条)、性別(新しいウィンドウが開きます男女雇用機会均等法6条)などを理由とする差別があった場合)、 (2)評価が著しくバランスを欠いて行われるなど権利濫用(人事考課権の濫用)に該当する場合(新しいウィンドウが開きます労契法3条5項)、 (3)人事考課に関する就業規則等の定め(つまり労働契約)に反する場合(例えば、制度上定められた考慮要素以外の要素に基づき評価した場合)には、違法と評価されることになります。人事考課(査定)が違法と評価された場合、従業員は企業に対し違法な人事考課が不法行為にあたるとして損害賠償請求を行うことができます(新しいウィンドウが開きます民法709条。例として、広島高判平13.5.23 マナック事件 労判811号21頁、大阪地判平13.6.27 住友生命事件 労判809号5頁)。

関係法令・資料

労働契約法(平成19年12月05日 法律第128号)第3条 7条

労働基準法(昭和22年04月07日 法律第49号)第3条

労働組合法(昭和24年06月01日 法律第174号)第7条

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法) (昭和47年07月01日 法律第113) 第6条

民法(明治29年04月27日 法律第89号)第90条 709条

(成蹊大学法学部准教授 原 昌登)

2011年4月掲載