Q10 人事権とは法的にどのような権利ですか。

ご利用にあたって

  • 労働問題Q&Aは個別事案について法的なアドバイスをするものではありません。
  • 本文の内容は各執筆者個人の責任によるもので、機構としての見解を示すものではありません。

具体的なご相談は、厚生労働省「総合労働相談コーナー」新しいウィンドウなど行政機関等の相談窓口にお尋ねください。


質問

使用者は労働者に対し人事権を持っていると聞きますが、人事権とはどのような権利なのでしょうか。また、会社は人事権をまったく自由に行使できるのでしょうか。何か制限はありますか?

回答本文の内容は執筆時点のものです。その後の法改正などは反映しておりません。

ポイント

人事権とは、一般に、労働者の地位の変動や処遇に関する使用者の決定権限のことを指します。人事権は労働契約に基づく権利なので、労働契約の範囲を超えて行使することはできず、また、権利濫用法理や個別の法律によって制限を受けることがあります。

解説

(人事権とは)

人事権とは、法律で直接定義されている権利ではありません。使用者は、労働契約に基づき、労働者の採用、配置、異動(配転)、人事考課、昇進・昇格・降格、求職、解雇などを行う権利を有すると解されます(もちろん、権利を有するといっても権利の濫用は禁止ですし、法律によって規制がなされることもあります)。こうした権利、より抽象的にいえば労働者の地位の変動や処遇に関する使用者の決定権限を「人事権」と呼ぶことがあるわけです。

このように、人事権は労働契約に基づく権利ですから、労働契約の内容、具体的には就業規則や労働協約、個別の合意で決めた労働契約の内容に沿って行使することになります。日本の企業では、一般に企業が広範な人事権をもち、企業組織の柔軟性を確保してきたといわれています。

(人事権に対する制限)

人事権に対する制限としては、まず、(1)権利濫用法理による制限があります(新しいウィンドウが開きます労働契約法3条5項)。例えば、配置に関する配転命令権は人事権の具体的な例であると考えられますが、配転命令権の行使は労働契約上の根拠があれば基本的に認められるものの、労働者に生じる不利益が通常甘受すべき程度を著しく超えるといった場合には権利の濫用として無効と扱われます(詳細は新しいウィンドウが開きます本節のQ16を参照してください)。

次に、(2)法律による個別の制限があります。例えば、配置が使用者の人事権に含まれるといっても、新しいウィンドウが開きます労基法3条の均等待遇や男女雇用機会均等法に反するような法律上禁止される差別にあたる配置(人事)は違法であり、損害賠償(新しいウィンドウが開きます民法709条)の対象になります。

なお、(3)人事権はあくまで労働契約に基づく権限ですから、労働契約におよそ含まれていないこと、つまり、就業規則や労働協約、個別の合意で定めた内容を超えて行使することはできないと解されます。その意味で、人事権は就業規則等によっても制限を受けると説明することができます。

関係法令・資料

労働契約法(平成19年12月05日 法律第128号)第3条

労働基準法(昭和22年04月07日 法律第49号)第3条

民法(明治29年04月27日 法律第89号) 第709条

(成蹊大学法学部准教授 原 昌登)

2011年4月掲載