Q7 試用期間の法的な意味はどのようなものですか。

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質問

新入社員です。入社してから3カ月間は仮採用扱いの試用期間で、3カ月後に本採用になると聞きました。試用期間とは何ですか? また、本採用されずに解雇されることもあるのでしょうか?

回答

ポイント

  1. 試用期間とは、採用後に従業員としての適格性を観察・評価するために企業が設けた期間であると解されます。試用期間中は、基本的に解約権留保付労働契約が成立していると考えられます。
  2. 試用期間満了時の本採用の拒否は、法的には労働契約の解約、すなわち解雇にあたるので、客観的合理性と社会的相当性が双方ともなければ、解雇権の濫用として無効となります。

解説

〈試用期間の法的性格〉

多くの企業が、採用後に一定の試用期間を設定し(新規学卒者の場合は通常3~6カ月程度)、入社した従業員の適格性を観察・評価しています。試用期間は仮採用で、試用期間満了時に本採用とする、という扱いも多く見られます。

上記のような試用期間の制度のもとでは、試用期間中における仮採用の従業員と企業の関係は、「解約権留保付労働契約」であるというのが最高裁の立場です(新しいウィンドウが開きます最大判昭48.12.12 三菱樹脂事件 民集27巻11号1536頁)。ですから、「本採用拒否」という文言を用いていたとしても、試用期間満了時に本採用しないということは、採用の問題ではなく、労働契約の解約の問題すなわち解雇の問題ということになります。解雇権濫用法理(新しいウィンドウが開きます労働契約法16条)によって、客観的合理性と社会的相当性の2つがなければ法的に無効となります(たとえ解約権が留保されていても、その解約権を濫用することは新しいウィンドウが開きます同16条によって否定されるということです)。判例は、採用するか否かを決定する際は、その従業員の資質、性格、能力といった適格性の有無に関連する事項について必要な調査を行い適切な判定資料を十分に収集することができないので、後日における調査や観察に基づく最終的決定を留保するために試用期間を設けることは合理的であるとしています。そして、試用期間における留保解約権に基づく解雇は、(本採用後の)通常の解雇よりも広い範囲において解雇の自由が認められるとも述べています(前掲 新しいウィンドウが開きます三菱樹脂事件)。

ですから、実際に就労を開始した後、能力面など従業員としての適格性に欠けると企業が判断した場合、留保解約権の行使が解雇権の濫用(新しいウィンドウが開きます労契法16条)とならなければ、留保解約権の行使(具体的には試用期間中の解雇あるいは試用期間満了時の本採用拒否)が法的に認められることになります。また、解雇権濫用か否かの判断においては、通常の解雇に比べると解雇に対する制限が弱い(客観的合理性、社会的相当性が通常の解雇の場合に比べて認められやすい)ということになるでしょう。ただし、たとえ保護の度合いが本採用後に比べて弱いとしても、留保解約権の行使が当然に認められるわけではない点に留意すべきでしょう(試用期間中の解雇について、適格性を有しないと認めることはできないとして解雇権濫用で無効であると判断した例に、東京高判平成21・9・15 ニュース証券事件 労判991号153頁があります)。

〈有期契約による試用〉

企業によっては、最初、期間の定めのある労働契約(有期契約)を締結して採用し、就労させる中で適格性等に問題がないことが確認できた場合に期間の定めのない労働契約に移行する(変更する)という扱いをしている例も見られます。このような場合に、当初の有期契約の期間が満了した際にそのまま雇用関係を終了させることは許されるでしょうか。有期契約の原則からすれば、期間満了で労働契約関係が終了することは当然ともいえそうですが、まず、いわゆる雇止め法理(解雇権濫用法理(新しいウィンドウが開きます労契法16条)の類推適用)によって、雇用関係を終了させることが許されないとされる場合がありえます 。これに加えて、判例は、労働契約の期間が従業員の適格性を評価・判断する目的で設けられた場合には、特段の事情がない限り(期間の満了により労働契約が当然に終了する旨の明確な合意が成立しているといった事情がない限り)、その期間は試用期間の性質をもつと解しています(新しいウィンドウが開きます最三小判平2.6.5 神戸弘陵学園事件 民集44巻4号668頁)。この判例によれば、たとえ形式上は有期契約を締結していたとしても、法的には期間の定めのない労働契約を締結しており、かつ有期契約の期間は試用期間に該当するということになります。そうすると、設定した期間の満了時にそのまま労働契約関係を終了させようとすることは、もし (1)有期契約であれば、原則として許されることであり、例外的に雇止め法理の適用を受けるにとどまるのに対し、 (2)試用期間であれば、解雇権濫用法理(新しいウィンドウが開きます労契法16条)の適用を直接受けることになります。当然、 (2)の方が (1)に比べ保護が厚いといえます。ただ、このような考え方は、いわゆるトライアル雇用の制度には制約ともなりかねないので、疑問も呈されています。

関係法令・資料

労働契約法(平成19年12月05日 法律第128号)第16条

(成蹊大学法学部准教授 原 昌登)

2011年4月掲載