Q1 職業安定法はどのようなことを定めた法律なのですか。

ご利用にあたって

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質問

新しいウィンドウが開きます職業安定法とは、どのようなことを定めているのですか?「職業」の「安定」といっても、労働者の募集、職業紹介、様々な要素があると思います。職業安定法の基本的な内容について教えてください。

回答本文の内容は執筆時点のものです。その後の法改正などは反映しておりません。

ポイント

職業安定法は、企業による労働者の労働者の募集・職業紹介・労働者供給について規制している法律です。特に、職業紹介事業に関する基本的なルールについて定めています。

解説

〈職業安定法の基本的な内容〉

新しいウィンドウが開きます職業安定法(職安法)は、一言でいえば、労働者の募集・職業紹介・労働者供給の基本的な枠組みについて定めた法律です。

労働者の募集とは、労働者を雇用しようとする者(求人者)が、自分でまたは他人に委託して、仕事を求めている人(求職者)に対し、被用者になるように(労働契約を締結するように)勧誘することです。職業紹介とは、仕事を求めている「求職者」と人材を求めている「求人者(事業主)」からそれぞれ求職と求人の申込みを受け、求職者と求人者の間に雇用関係(労働契約)が成立するようにあっせんすることをいいます。労働者供給とは、供給契約に基づいて、労働者を他人(他社)の指揮命令を受け労働に従事させることです(労働者派遣法に該当するものは含まないとされています)(以上、各用語の定義は新しいウィンドウが開きます職安法4条を参照してください)。これらはいずれも労働市場における重要な活動ですから、職安法は労働市場に関する基本的な事柄を定めたルールであるともいえますね。

〈職業紹介に関するルール〉

職業紹介事業は、国がハローワーク(公共職業安定所)を通して行うほか、多くの民間職業紹介事業者によって行われています。ハローワーク、民間の職業紹介事業者に共通する職業紹介の基本ルールは次の通りです。

まず、職業紹介に臨む基本的な考え方として、求人及び求職の申込みのすべてを受理する義務があります(新しいウィンドウが開きます職安法5条の5新しいウィンドウが開きます5条の6(以下、職安法の規定は条文番号のみで示します)。求人、求職に法令違反がある場合は例外とされます)。そして、職業紹介を行うにあたっては、労働条件(募集条件)を求職者に明示すること、具体的には、従事すべき業務の内容、労働契約の期間、就業場所、労働時間、賃金等の明示が義務づけられています(新しいウィンドウが開きます同5条の3新しいウィンドウが開きます職安法施行規則4条の2。なお、この点については、求人者もハローワーク等に対し労働条件(募集条件)を明示することが義務づけられます)。また、求職者に対しその能力に適合する職業を紹介し、求人者に対してはその雇用条件に適合する求職者を紹介するよう努めなければならないとされています(新しいウィンドウが開きます職安法5条の7)。

また、求職者の人権と関連する規制があります。職業選択の自由を尊重しなければならず、求職者にある職業に就くことを強制してはならないとされています(新しいウィンドウが開きます同2条)。差別的取扱いも禁じられており、求職者(あるいは求人者)の人種、国籍、信条、性別、社会的身分、従前の職業、労働組合の組合員であることを理由とした差別は禁止されています(新しいウィンドウが開きます同3条)。

この他、個人情報の保護に関しても、業務の目的達成に必要な範囲内で行わなければならないとされています(新しいウィンドウが開きます同5条の4)。

〈労働者の募集に関するルール〉

求人者は、自らがWebサイトその他を通して直接募集を行うほか、外部に委託して募集を行うことが考えられます。直接募集に関しては、原則として自由に行うことができますが、例外的に法律によって規制がなされています(例えば年齢制限に関する雇用対策法の規制などがあります。新しいウィンドウが開きます本節のQ5を参照してください)。委託募集(委託を受けて募集を行う事業者)に関しては、求人者から委託を受けて有料で募集事業を行う場合は許可制(厚生労働大臣の許可)、無料で行う場合は届出制とされています(新しいウィンドウが開きます職安法36条)。また、求人者が、委託先に認可を受けた報酬以外の報酬を与えること、募集業務を行う自社の従業員に賃金以外の報酬を与えることは禁止されています(新しいウィンドウが開きます同40条)。以上のほか、職業紹介のルールでもある労働条件(募集条件)の明示や個人情報の保護も行うこととされています。

〈労働者供給に関するルール〉

労働者供給事業は職安法によって原則として禁止されています(新しいウィンドウが開きます職安法44条)。また、労働者供給事業を行う者から供される労働者を使用してはならないと定められています(新しいウィンドウが開きます同44条)。原則に対する例外として、労働組合が厚生労働大臣の許可を得た場合は、無料の労働者供給事業を行うことができます(新しいウィンドウが開きます同45条)。

なお、労働者派遣事業は、派遣会社(派遣元)が、供給契約(労働者派遣契約)に基づいて、自己の雇用する労働者(派遣労働者)を他人(派遣先)の指揮命令を受けて労働させるわけですから、職安法に違反するようにも思えます。しかし、この点については、労働者派遣法の制定に伴い、立法的な解決が図られています。具体的には、労働者派遣法上の労働者派遣の定義「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させること」(新しいウィンドウが開きます労働者派遣法2条)にあてはまるものは、労働者供給の定義から除外されています(新しいウィンドウが開きます職安法4条6項)。法律上、労働者派遣にあてはまるものは、労働者供給ではないということですね。

関係法令・資料

職業安定法(昭和22年11月30日 法律第141号)第2条 3条 4条 5条 36条 40条 44条 45条

職業安定法施行規則(昭和22年12月29日 労働省令第12号)第4条

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(労働者派遣法)(昭和60年07月05日 法律第88号)第2条

(成蹊大学法学部准教授 原 昌登)

2011年4月掲載