Q4 労働協約の効力は、当該労働協約の締結組合に所属していない者には及ばないのでしょうか。

ご利用にあたって

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質問

わが社には、従業員の80%を組織するA組合があります。A組合との間で勤勉手当の増額について協約締結にいたりました。この協約の内容は、A組合に所属していない従業員にも及ぶのでしょうか。

回答本文の内容は執筆時点のものです。その後の法改正などは反映しておりません。

ポイント

  1. 工場や事業場に常時使用される労働者の4分の3以上の数の労働者が1つの労働協約の適用を受けるに至ったときは、当該工場事業場に使用される他の同種の労働者に関しても、当該労働協約が適用されます。
  2. 適用を受ける労働協約の内容が、従来未組織の同種労働者に適用されていた労働条件を下回る場合であっても、それことのみをもって当然に及ばないということにはなりません。
  3. ただし、労働協約によって特定の未組織労働者にもたらされる不利益の程度・内容、労働協約が締結されるに至った経緯、当該労働者が労働組合の組合員資格を認められているかどうか等に照らし、当該労働協約と特定の未組織労働者に適用することが著しく不合理であると認められる特段の事情があるときは、労働協約の規範的効力を当該労働者に及ぼすことはできません。

解説

  1. 労働協約は、通常、労働組合と使用者との間で締結されます。そして、当該労働協約の労働条件に関する部分については、当該労度組合に所属する組合員に対して効力が及びます。これを一般的には「規範的効力」といい、新しいウィンドウが開きます労働組合法16条で定められています。
  2. このように、労働協約の規範的効力は、締結組合に所属する労働組合員に及ぶのが原則です。しかし、労働組合法は17条と18条で2つの例外的な場合を定めています。それが、 (1)事業場単位の一般的拘束力(新しいウィンドウが開きます労働組合法17条)と、 (2)地域的一般的拘束力(新しいウィンドウが開きます労働組合法18条)です。実務においては、 (2)地域的一般的拘束力が問題となるケースは少なく、本質問も (1)事業場単位の一般的拘束力に関するものですので、以下では、事業場単位の一般的拘束力について説明します。

  3. 労働組合法は、工場や事業場に常時使用される労働者の4分の3以上の数の労働者が1つの労働協約の適用を受けるに至ったときは、当該工場事業場に使用される他の同種の労働者に関しても、当該労働協約が適用されるものとする、と規定しています。
  4. 「常時使用される」といえるかどうかは、契約形式だけで判断されるのではなく、実質的に判断されることになります。したがって、短期間の契約が反復して更新されるケースでは、「常時使用される」と評価される場合があります。

    「同種の労働者」といえるかどうかは、基本的には協約の適用対象者を基準として判断しますが、しかしやはり最終的には、実質的に、ケースバイケースで判断されることになります。場合によっては、正社員に対して、パート社員が「同種の労働者」に該当しうるケースもありえないわけではありません。

    以上のような要件を満たした場合には、他の同種の労働者に対して、拡張適用されることになります。新しいウィンドウが開きます労働組合法17条は「当該協約が適用されるものとする」と定めていますが、拡張適用される部分は、当該協約の規範的部分、すなわち、労働条件に関する部分に限られます。

    こうして生じた一般的拘束力は、未組織の同種労働者に及ぶことになります。そして、適用を受ける労働協約の内容が、従来未組織の同種労働者に適用されていた労働条件を下回る場合であっても、そのことのみをもって当然に及ばないということにはなりません。新しいウィンドウが開きます朝日火災海上保険(高田)事件最高裁判決(最三小判平成8年3月26日)は、「同条(新しいウィンドウが開きます労働組合法17条)は、どの文言上、同条に基づき労働協約の規範的効力が同種労働者にも及ぶ範囲について何らの限定もしていない上、労働協約の締結に当たっては、その時々の社会的経済的労働条件を考慮して、総合的に労働条件を定めていくのが通常であるから、その一部をとらえて有利、不利をいうことは適当でないからである。また、右規定の趣旨は、主として一の事業場の4分の3以上の同種労働者に適用される労働協約上の労働条件によって当該事業場の労働条件を統一し、労働組合の団結権の維持強化と当該事業場における公正妥当な労働条件の実現を図ることにあると解されるから、その趣旨からしても、未組織の同種労働者の労働条件が一部有利なものであることの故に、労働協約の規範的効力がこれに及ばないとするのは妥当でない」と述べています。ただし、当該判例は続いて、以下のようにも述べていることにも注意する必要があります。「しかしながら他面、未組織労働者は、労働組合の意思決定に関与する立場になく、また逆に、労働組合は、未組織労働者の労働条件を改善し、その他の利益を擁護するために活動する立場にないことからすると、労働協約によって特定の未組織労働者にもたらされる不利益の程度・内容、労働協約が締結されるに至った経緯、当該労働者が労働組合の組合員資格を認められているかどうか等に照らし、当該労働協約と特定の未組織労働者に適用することが著しく不合理であると認められる特段の事情があるときは、労働協約の規範的効力を当該労働者に及ぼすことはできない。」

    未組織労働者には原則として一般的拘束力が及ぶことは前述のとおりですが、少数組合に所属する者に対してはどうでしょうか。この点についてどのように考えるかは非常に難問であり、学説および裁判例においても一致した見解はみられません。

関係法令・資料

労働組合法(昭和24年06月01日 法律第174号)16条17条18条

(明治大学法学部准教授 小西康之)

2010年10月掲載